研究実績の概要 |
内容:最終年度は児童期(小1~3)を対象とした。本研究は幼児期から児童期にかけての対象操作とイメージとの関連性を捉えることが主たる目的であった。メンタルローテーション課題での「ひきうつし」による身体利用を分析し、加速度センサーで計測した手及び頭部の揺れと年齢及びイメージ変換との関係を検討した。
主たる結果:①幼児期において観察されたひきうつしの7カテゴリー(野田,2015)が児童期において再度確認された。②幼児期、児童期ともにメンタルローテーションの遂行レベルが高いと、ひきうつしが減少し、身体的利用から対象の内的操作へと移行していくことが示された。③手、頭部の身体部位での揺れが年齢とともに減少していくことが示され、特に小1と小3との間に差があることがわかった。④測定した身体部位間の協調(coordination)の度合いを検討したところ、対象児全体で左右の手の協調が左手と頭部の協調より強く現れることが認められた。
意義と重要性:本研究で得られた知見は幼児期から児童期にかけてのイメージ変換という限定的な認知課題によるが、身体を利用して解こうとする機制の側面が明らかになり、また課題遂行時の身体の揺れが、年齢、成績とともに収束していく発達の姿を捉えられたことは意義がある。更に、身体部位間の揺れを協調軸(X軸)とし、イメージ変換の程度を反映する決定係数を変換軸(Y軸)とした散布図を作成した。協調軸は値が高くなるに従い同時に揺れが共変し、値が低くなると揺れが互い違いの動きになることを意味する。一方、変換軸は心内のイメージを一定の速度で回転させたことを反映する。これにより子どもの身体的・認知的な状態像を捉えることに成功した点で意義がある。これらのことは、本研究で用いた身体の揺れの指標や身体利用を活用することで、変換操作を要する教育への適用可能性を示唆している点で重要な知見であるといえる。
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