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2013 年度 実施状況報告書

デジタル歴史史料活用のためのシステム実装と実証

研究課題

研究課題/領域番号 25560125
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東京大学

研究代表者

大和 裕幸  東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50220421)

研究分担者 鈴木 淳  東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80242048)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード平賀譲 / 産業技術 / 海軍 / 技術史 / 軍産学複合体 / 歴史研究 / セマンティックウェブ / デジタルアーカイブ
研究概要

初年度はシステムを構築し、システム上で歴史研究を行うことでその評価を行った。
システムは①史料の登録、②調査結果の保存、③史料の分析、三つの機能を提供する。①では、画像史料の他、デジタルアーカイブで公開中の史料を登録できる。②では、セマンティックウェブ技術を用いて登録した史料にURIを与え、そのメタデータとして書誌情報や調査結果を保存する。さらに、テキストマイニング技術や画像処理技術を用いて、計算機による半自動的なメタデータ付与機能も構築した。③では、付与したメタデータに基づいて、史料の分類や並び替えを可能とし、ユーザの目的に応じた分析を支援する環境を構築した。
また、システム上で外務省来電の送付決定過程の分析に関する歴史研究を行った。来電は在外公館から外務省に送られた後、省内の人物が海軍や陸軍等の他機関に送付するが、この送付先を決定している人物は明らかになっていない。したがって外交史料館が保有するパリ講和会議に関する来電を収録した簿冊10件、来電471件を対象とし、来電の送付先決定者を特定することを目的とした。具体的な作業としては、大和、鈴木研究室の学生が画像史料に記述された史料名や作成日、来電を閲覧した人物のサインや送付先を共同でメタデータとして付与した。これらにより、作成日に基づく来電の並び替えや、送付先指示筆跡別の来電の閲覧者の登場割合等を分析した。その結果、1919年9月以前は当時外務次官であった幣原外務次官が送付先を決定し、それ以降では電信課長である澤田が送付先を仮決定し、埴原が訂正することで最終的な決定していたという仮説を立案できた。この歴史研究を通じて、複数研究者で史料を収集、整理することによる労力の軽減、およびメタデータに基づく史料の比較や並び替え、可視化を行うことで、史実に対する新たな仮説の立案や定量的な検証が可能となり、システムの有用性を示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の前期の目的であったシステムの完成は達成した。具体的にはSpringフレームワークを用いてシステムを再構築し、各種ファイルやRDFをMySQLによるデータベースサーバで管理する等、適宜システムの改良を加えることで、以前の科研費で試行したロジックを実運用に耐えうるシステム上に実装した。さらに以前のロジックからの発展として、複数研究者によるデータベース共有を可能とすることで、複数研究者が共同で歴史研究をシステム上で遂行可能な環境を構築した。その際、歴史研究者へのヒアリングを通じて、調査結果によっては他者との共有を避けたい情報が存在することを確認し、史料に付与するメタデータに編集権限や公開範囲の設定を可能とする等、メタデータの管理方法の改良も行った。また、人手によるメタデータの付与における労力軽減を目的し、計算機が史料情報(ファイルのバイナリデータや付与されたメタデータ)に基づいて半自動的に新しいメタデータを付与する環境構築も新たに行った。
初年度の後期では、共同研究者である鈴木研究室の学生と共にシステム上で歴史研究を行い、共同研究者からのフィードバックに基づくシステムの改良を行った。さらに、外務省来電の送付先決定過程分析を研究対象とした歴史研究において、来電の送付者の特定等の史実に対する新たな仮説を立案することができ、提案手法および開発したシステムの有用性を示すことができた。システムの有用性の評価は今年度の目的であったが、先行して達成することができた。
一方で、初年度後期の研究計画であった平賀譲デジタルアーカイブで公開中の史料への書誌情報の付与は次年度に繰り越された。しかし、初年度にシステムの構築、歴史研究者との実証実験、およびフィードバックに基づくシステムの改良を終えているため、今年度は開発したシステム上で複数研究者による書誌情報の付与を円滑に行うことができると考えている。

今後の研究の推進方策

今年度は開発したシステムを用いて、平賀譲デジタルアーカイブで公開中の史料を主な対象とし、書誌情報の付与や歴史研究を遂行する。まず、歴史研究テーマの選定を行い、テーマに関連する技術史、造船史、海事史等の概念をオントロジーとして体系化することを含め、書誌情報をメタデータとして史料に付与する。この書誌情報付与に関しては、大和研究室の学生や鈴木研究室の学生等の複数の研究者が共同で登録する。さらに、テキストマイニングや画像処理といった技術を用いて、計算機によるメタデータの半自動的な付与も行い、本プロセスを効率的に行う。これまでの作業は初年度に開発したシステム上ですべて行うことが可能である。現在想定している歴史研究のテーマとしては、長門型戦艦の形状の変化に関する分析(例えば長門型戦艦とその後継戦艦である加賀型戦艦では煙突本数が減少している)や、年代の変化に基づく戦艦費の増減に関する分析、さらに平賀譲が遺した日記を用いた平賀粛学に関する分析等を想定している。いずれの研究テーマにおいても複数研究者で付与したメタデータを用いて史料の分類や並び替えを行い、従来の歴史研究プロセスと比較した際の効率化や、新たな史実の発見によるシステムの有用性の評価を目標とする。またこれらの研究を通じて得られた知見を応用し、付与したメタデータを歴史研究における標準メタデータセットとして提案することも想定している。さらにシステム利用者のログデータを収集、分析することにより、歴史研究に対する提案手法および開発したシステムの定量的な評価も目標とする。
加えて、初年度に行った外務省来電に関する送付先決定過程分析における研究成果や上述の遂行予定の研究成果を対外論文として公表する。前者に関して前期中に人工知能学会の論文誌に投稿予定である。後者に関しては人工知能学会の他、情報処理学会や海事史学会への投稿を予定している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 備考 (1件)

  • [備考] なし

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公開日: 2015-05-28  

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