研究実績の概要 |
平成26年度は,前年度研究を踏まえて,土壌の磁化から地震・洪水跡の記録を読みとる方法と装置の改良をまず行った.そして研究は,北陸地域の遺跡等で検出された過去の自然災害跡を対象にした.新潟県で噴砂が認められた遺跡の場所を,GISでまとめて地形・地理との比較を行い,川に近い地域に多い等の特徴が示された.以下では,富山県砺波市の噴砂での研究結果を概説する. 砺波市の中世の城館跡である御館山館跡の発掘調査で,城館遺構と共に,液状化跡の噴砂が認められた.富山県の歴史時代の大きな地震として,貞観(878年),天正(1586年),安政飛越(1858年)の地震が知られ,天正地震では,御館山館跡より3kmの木舟城に甚大な被害が出ていた(古文書).発掘では,噴砂層の近傍で16世紀後半の遺物包含層や江戸時代の地層が認められた.これらの地層と噴砂との切り合は曖昧であるが,木舟城との地理的近さも考慮され,考古学や地質調査では,噴砂は天正地震での発生と推測されていた.ただ富山県西部には安政飛越地震の被害も古文書にあり,御館山館跡の噴砂はこの地震に因る可能性もあった. 噴砂の磁化方向を求めて地磁気変化と対比した結果,噴砂の形成年代は1850年頃と得られ,安政飛越地震(1858年)に近い年代が示された.近傍(高岡市・小矢部市)では,この地震被害を示す文献や遺跡での痕跡が最近報告されている.こうした研究も踏まえ,磁化研究では,御館山館跡の噴砂の(少なくとも試料採取の)領域は,安政飛越地震での形成と考えた.観察では噴砂は同じ場所で2回起きており,一度起きた場所で再度起きた可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の遺跡の発掘調査で,地震の跡(液状化,変形)や洪水の痕跡が検出された複数の遺構において,県市町村の教育委員会等から協力を頂き,新たな研究試料を入手できた.北陸では,火山噴火での融雪泥流による被害も多くあり,遺跡にも影響したと考えられるが,その方面での本研究の適用も始めることができた.研究結果をまとめ,一部の成果では,業績に示す公表も行っており,研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に発掘が計画されている(自然災害跡が示唆される)遺跡での研究を予定しており,今年度に得た試料と併せて研究する.今年度は,福井県での津波堆積物の調査で得られた,津波と推測される堆積物も研究試料として入手できた.予察的な実験では,磁化は安定で,津波の際の堆積時の磁化も抽出できることを認めた.今後,磁化研究と共に,地質や考古学,古文書との対比も行い,研究を進める予定でいる.
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