研究実績の概要 |
平成27年度は,富山県高岡市の出来田南遺跡の住居祉に見られた噴砂の磁化を研究してまとめた.噴砂は約200m離れた2つの地区の数地点から,それぞれ複数試料を採取した.両地区の噴砂の磁化は同じ方向を示し,地磁気変化との対比から8世紀後半の地震による形成と考えられた.出来田南遺跡から数kmの高岡市石塚遺跡で認められた噴砂の磁化研究でも 780年頃の年代が示されており(酒井他,2007),富山県西部地域に,8世紀後半に大規模な噴砂を生じた地震被害があったと推測された.富山県に影響した最も古い大きな地震として貞観地震(863年)が知られるが,それ以前は文献記録がないので,出来田南遺跡や石塚遺跡で示された8世紀後半の地震は,富山県では報告の無い地震の可能性が高い.今後,この時代の地震被害の広がりの検討も含めて,遺跡地震跡の研究をさらに行う必要がある. また噴砂の一部は二成分の磁化を示した.低保磁力成分が地磁気を記録しており,高保磁力成分も北方向にあるが上向きの磁化を示した.自己反転磁化の可能性は無いので,二成分の存在は,噴砂が液状化の上体から地表付近に到達してある程度固まり(高保磁力成分が獲得されてから),その後の地震等で動いたことを示していると考えられる.磁化から,噴砂形成過程を探る新たな研究も可能となる. 砺波市徳万頼成遺跡では,洪水堆積物層について,互層になっている水田層・焼土層と共に磁化研究を行った.洪水層に関する簡易実験も行い,洪水堆積層の磁化も年代推定に利用できることを示した. 3年間の成果を通して,遺跡の地震跡や洪水跡について,本研究で開発改良した研究法が年代や地層変形の研究に有用であることを明らかにできた.
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