研究課題
本研究では、残留性に優れるイネ遺物であるプラント・オパールに内在する遺伝情報を安定的に取り出す手法を開発し、炭化米などを遺伝情報の給源とする現行手法の2つの限界「遺伝情報の回収率」と「栽培イネの多様性評価」を打ち破る画期的な分析法の構築を目指してきた。具体的には、3年間の研究期間において、過去の研究で指摘されてきたプラント・オパール中に遺伝情報の存在の検証、当該分析手法の成否を決定する「土壌からのプラント・オパールの抽出技術」と「プラント・オパールからの遺伝情報の抽出技術」の検討開発に取り組んできた。それぞれの研究結果と成果は、以下のとおりである。【プラント・オパール中の遺伝情報の存否】国内外の水田遺構土壌から抽出したプラント・オパールにDAPI染色法を適用して検証を行った結果、イネやヨシ属などのプラント・オパールに遺伝情報が内在することが確認できた(H25)。【遺伝情報にダメージを抑えて土壌からプラント・オパールを大量に抽出する技術】遺伝情報へダメージを与える可能性が高い「乾燥」と「夾雑有機物の除去」の工程において、40度の低温乾燥と超音波洗浄を利用した抽出技術を構築した(H25~26)。今年度は乾燥工程を凍結乾燥にほぼ相当する方法に更新し、温度による遺伝情報へのダメージをゼロにするとともに処理時間を24時間短縮した抽出工程を構築した。【土壌から抽出したプラント・オパールから遺伝情報を取り出し増幅する技術】プラント・オパールからDNA分析が可能な条件と方法を検討した結果、いくつかの遺伝子および遺伝子間領域で遺伝情報の増幅が可能であることが確認された(H26)。今年度はさらに残留条件が厳しい土壌から抽出したプラント・オパールからの遺伝情報の復元方法の検討を行った。その結果、核DNAは試料によるが、葉緑体DNAについてはほぼ全ての試料から増幅できることが確認できた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Genetic Resources and Crop Evolution
巻: 63 ページ: 447-467
10.1007/s10722-015-0262-2