各種土器に対してテラヘルツ波反射分光を実施し、各種光学定数(屈折率、吸収係数、複素誘電率)が得られ、それぞれ土器ごとに差異や共通点が確認された。これらの差異は土器を構成する成分や結晶構造の違いに起因する可能性があり、テラヘルツ波による土器の非破壊計測の可能性を示すことができた。しかし、反射分光測定ではリファレンス(金属板)とサンプル(土器)の測定が不可欠であり、それぞれに反射面のずれが生じると、位相情報に誤差が生じ、それに起因して光学定数にも影響を与える。この影響を定量的に見積もる検証を行った。結果、両者の光路の時間差が2psecを越えると、複素屈折率の算出に大きく影響を及ぼし、スペクトルも大きく歪むことが分かった。本研究で行った反射分光では、反射面ずれが起こりにくい機構にしているが、完全に反射面ずれを除去することは困難である。従って、サンプル設置による位置ずれの生じない実験系に改善する必要があることがわかった。そこで、リファレンス信号取得の必要が無い、テラヘルツ・エリプソメトリの導入を検討した。基本的な実験系を構築し、ガラスなどの物性値が既知のサンプルに対して性能評価を行った。今後は、正確な物理計測が可能となったのちに、土器の物性値産出への展開を行っていく予定である。
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