研究課題
本研究では,乾燥地の草原地帯において「遊牧民が日常的に利用する浅井戸をどこに掘れば生活に十分な水量が得られるか」という問題解決を最終目的とし,地下水が流動する際に発する微弱な音波を地表面から集音することで, 1. 地表面から何m下に地下水面があるか,2. さらに地下水が選択的に流動しやすい水みち位置はどこか,を推定可能な手法を開発することを目的とする。平成26年度は,平成25年度に引き続きモンゴルの半乾燥草原地帯(Tuv県・Bayan-Unjuul市)にて,地下水観測を実施した。地下流水音データと地下水深との関連性を明らかにするため,域内の84個の既存井戸を用いて地下流水音の音圧分布,地下水位を求めた。同時に各井戸水の水質(水温・EC・pH・RpH)を現地計測するとともに,各地の地質踏査を行った。また,各井戸では安定同位体分析用の水サンプルを採取し,日本に持ち帰った後に鳥取大学・乾燥地研究センターの安定同位体比質量分析システムを用いて酸素・水素の安定同位体比を求めた。各地室の代表地点および水音異常地点にて2次元比抵抗映像法および地中レーダー法による地盤・地下水探査を併せて実施した。その結果,地下流水音を用いて深度15m程度までの地下水位を推定できることが明らかになった。また,平成25年度までの地下流水音-地下水位の推定精度は約2mであったが,2次元比抵抗映像法および地中レーダー法による推定地下水面を用いて,地下流水音の異常地点を抽出・修正したところ,その精度は約1mまで向上した。さらに,水質・安定同位体分析の結果から分類した各帯水層の地質により,地下流水音-地下水位の推定式を細分類したところ,推定精度は1m以内まで向上した。加えて,帯水層の岩盤が未風化のものおよび火山岩地域では地下流水音が大きく,堆積岩地域では地下流水音が小さくなる傾向が示された。
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Journal of Arid Land Studies
巻: 24-1 ページ: 245-248
Arid Land Research and Management
巻: 28 ページ: 242-246
10.1080/15324982.2013.819824