研究課題/領域番号 |
25560153
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野 憲司 京都大学, 防災研究所, 教授 (10641235)
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研究分担者 |
神田 正美 城西国際大学, 経営情報学部, 教授 (40513867)
赤倉 康寛 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70462629)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サプライチェーンモデル化 / 自動車産業部品供給構造 / 東日本大震災インパクト |
研究概要 |
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東日本で生産される部品類の供給停止が世界規模で生産活動に波及した連鎖災害であった。本研究では、日本の自動車産業等が有するサプライチェーンの構造のモデル化とこれを用いた災害による製造業サプライチェーンへのインパクト及びモデル・シミュレーションによるサプライチェーンマネジメントの効果の測定を行い、東日本大震災のような連鎖的災害による経済への負の影響についての評価を試みる。 東日本大震災の発生によって、東北・北関東地域の自動車生産ラインや部品工場のサプライチェーンが寸断されたことから、2011年4月期のトヨタ、ホンダの生産水準は通常の2割、日産自動車は5割の水準に落ち込んだ。一方、これらの生産に必要な自動車部品類の生産水準は25%~35%の低下にとどまり、一部の非代替的部品の供給が全体の生産システムを左右することがわかった。そこで平成25年度は、自動車産業のサプライチェーンのモデル化を実施した。具体的には、経済産業省の工業統計に基づき、強い相関関係を有する自動車用部分品の生産額と四輪車の生産台数を用いて、四輪車生産を支える主要な6部分品類と四輪車生産ラインのサプライチェーンツリー構造モデルを作成した。 モデルでは、①四輪車生産台数は供給量が最小となる部品量で決定、②サプライヤーの工場在庫と中間在庫が管理値を超えると部品生産が停止、③被災地と被災地外の部品の間には代替性なしと仮定し、東日本大震災時の実績値とモデル値の分散を最小化するパラメーターを求めた。 このモデルによって、日本大震災以降自動車メーカーが始めたサプライチェーンの可視化や自動車部品調達先の分散化、部品在庫の積み増し等の対策についてこれらの対策が一定のリスク低減効果を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、主要企業グループのサプライチェーンのモデル化にあたって、アンケートやヒアリング調査に基づくこととしていたが、ヒアリングで得られた情報には限りがあり、また事前調査を通じてアンケートでえられる情報も限定的なものであることが判明したため、平成25年度研究では工業統計の詳細月データに基づくセミマクロ的なアプローチによるモデルへと研究方針を切り替えた。しかしながらこれらのヒアリングや事前調査に時間を要したため、自動車産業の国内サプライチェーン構造を反映したモデルの作成までは終えたが、海外事業所を含むグローバルモデルへの拡張や企業の行うサプライチェーン強化対策の分析、経済へのインパクトの評価については平成26年度に持ち越した。このようなことから30~40%の進捗状況であり、「やや遅れている」と自己評価した。なお、平成26年度は、民間調査会社が構築した自動車産業データベースに基づきビッグデータを用いたモデル構築の可能性についても検討することとしている。
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今後の研究の推進方策 |
当面、国内モデルを活用して企業の行うサプライチェーン強化対策の分析評価を行うとともに、セミマクロ的な統計データに基づく世界モデルへの拡張を進める。また、3月から使用可能となった世界規模の自動車部品産業データベースを活用しつつ、また7月にはタイ国への海外調査を行う計画であることから、これらに立脚したより詳細なグローバルサプライチェーンモデルの構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費未払いのため。(データベース購入費48万円+消費税.利用開始は3月7日であるが,契約期間が平成26年4月1日から1年(平成25年3月中は無料)のため、料金は平成26年度払いとなった) 未払い金の速やかな支出(4月早々)により解消の予定。
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