研究課題/領域番号 |
25560154
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 聡 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80252469)
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研究分担者 |
神田 佑亮 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60636463)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地域計画 / 地域コミュニティ / 物語描写 / 解釈学的アプローチ / 交通まちづくり |
研究概要 |
LRTやBRTといった新しい交通システムの整備や公共交通利用促進策などの問題を進めるためには,行政の行政権限のみでは不十分であり,地域住民,地域コミュニティの自発的な活動が重要となっている.こうした視点から近年の地域計画では「まちづくり」が非常に重用視されるに至っている.この共同体・地域計画は,一面において,「合理的な交通計画論」を必要としている一方で,その一面において,「地域コミュニティによる自発的な“まちづくり論”」を必要としていることは間違いない.そしてこの“まちづくり論”において重要なのは地域コミュニティの活力の問題でもある.例えば,多くの場合,「地域のコミュニティ・バス」は,行政のみでなく,地域コミュニティそのもので支えていくことが必要である.ところが,地域コミュニティに,コミュニティ・バスを支えるための「活力」が不在であれば,行政単独でコミュニティ・バスを支えていかなければならなり,結局,その持続的な運用ができなくなってしまう.それ故,コミュニティ・バスの持続的運営のためには,これまで様々な形で蓄積されてきた技術と制度の質的向上に関する諸研究に加えて,地域コミュニティの活力の増進に関する研究が必要とされている 本研究では,「共同体・地域計画」の具体事例を取り上げ,その社会的動態を民俗学的アプローチに基づいて記述する.すなわち,それぞれの共同体・地域計画活動に専門家として参画していくと同時に,様々な関係者への継続的なインタビュー調査を進め,これらを踏まえた上で,その共同体・地域計画の社会的動態を物語文を援用しつつ描写していく.そして,それを通じて,共同体・地域計画に資する知見の抽出を目指す
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,研究メンバー間で,地域コミュニティの活力に関わる,交通計画学,および民俗学的研究についての認識共有を深める議論を行った.その中で,改めてそれぞれの専門領域における研究レビューを分担して行った.それと同時に,本研究のフィールドとして,いずれの地域が対象可能であるかを検討した.その結果,熊本県・小国町の地熱発電,高知県・黒潮町の地域防災をフィールドとして設定し,調査を行った. また,上記の具体的なコミュニティ施策現場に,個々の研究者が,具体的な現場に入り込み,それと同時に,民俗学的アプローチを踏まえ,各研究メンバーが,当該共同体・地域計画に関わる様々な人々に,持続的にインタビュー調査を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる平成26年度は,こうした関与・参画を通じて得られた「経験」を手がかりに,当該の活動の意味や意義,あるいは,その地域の伝統,文化,民俗性に関して,様々な角度からメンバー間で議論する.そしてそれと共に,そうした議論の過程で論ぜられた諸種の解釈を,様々な形で「記述」「描写」していく作業を,逐次的に実施する.なお,そうした「描写」においては,必ずしも数理的論文,OR的論文の形式に必ずしもこだわらず,民俗学等で広く採用されている,「解釈学的な定性的記述方法」を活用していく.ただし,心理学研究等で一般に採用されている従来型の「仮説の措定→統計分析による検定や探索的分析→その分析結果についての定性的解釈の記述」という方式も適材適所に採用することとする. 以上の「コミュニティ内での実践」と「解釈」の濃密な繰り返しを通じて,「コミュニティの活力」を浮き彫りとしつつ,普遍性ある形で,万人が理解しうる形で記述していくことを目指す.そして,以上の実践と討議,論述を二カ年間通して濃密に実施した上で,具体的な処方箋としての地域コミュニティ施策についての最終討議を行う.
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