本研究では,「地域活力の増進」を明示的にもたらしうる「地域計画」のあり方を研究し,それに基づき人文社会科学的な新しい共同体・地域計画論」を提案することを目的として,都市における人々の活力ある実践を支援するための学問である「民俗学」,な らびに,その「活力」を最も厳密なる科学にて取り扱う「解釈学的方法」の方法論を援用し,「共同体・地域計画」の実践事例を取り上げ,その社会的動態を記述した. 具体的には,熊本県阿蘇における地熱発電事業に着目し,1週間ほど現地に滞在し,村の歴史や地熱発電事業の構想に至るまでの経緯を村民や事業関係者にヒアリングを行い,そこから浮かび上がった村民の地域活力の復活への期待と事業関係者の地域活力復活ビジネスにかける想いが融合し,地域が一体となって地熱発電の稼働に向けて想いを一つにしていく様子を物語描写した.また,南海トラフ地震によって最大34mの津波が襲来すると予測されている高知県黒潮町における防災対策に焦点を当て,町長のリーダーシップの基,町の職員や地域住民が一致団結して先進的な防災対策に取り組んでいる様子を物語として描写した. 以上の研究を通じて,人口減少等によって活力を失った地域,あるいは,自然災害によって活力を失う可能性を有する地域において,その被害を最小限に留め,逸早く復活を遂げるために行政,住民,企業に求められる役割や資質を明らかにすることができた.
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