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2013 年度 実施状況報告書

組織的な知識生産プロセスのモデル化とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 25560156
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関青山学院大学

研究代表者

水山 元  青山学院大学, 理工学部, 准教授 (40252473)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード知識生産システム / 知識生産プロセス / プロトコル分析 / 知識マネジメント / 創造的会議
研究概要

今年度は,創造的会議の具体的な状況設定として,玩具設計のためのワークショップをとり上げた.そして,この状況設定の下での,知識生産プロセスの対象オブジェクトと,オブジェクトに変化をもたらす作用の二つについてモデル化した.まず,オブジェクトについては,具体的な設計変数(玩具の材質,形状,色,重さ,長さなど),それらによって玩具に付与される抽象的な属性,そして玩具が子供の成長のどのような側面に寄与するかを表す成長要素,の3階層からなるモデルを導入した.なお,抽象的な属性の項目については,玩具に関連するドキュメントからのテキストマイニングによって抽出した.一方,作用については,玩具設計を,抽象度の階層を変化させながら問題の発見と解決をくり返すプロセスと考え,問題の導入,問題の分析,解の提案,解の分析などの機能に分類・モデル化した.そして,これら二つのモデルに基づいて,玩具設計における知識生産プロセスを解明するためのプロトコル分析手法を提案した.ここに,プロトコル分析とは,ワークショップ中の発話をデータとして書き起こし,それらにタグを付与した上で,参加者全員による集合的な思考プロセスをタグの比率や時系列として分析していくものである.続いて,玩具設計のワークショップを,設計支援ツールを利用する場合と,利用しない場合の二つのケースについて,それぞれ3回ずつ実施し,それらに提案したプロトコル分析手法を適用した.その結果,設計支援ツールを用いることで,より具体的で明確な提案が増えること, 解を導き出すヒントや解を決定付ける根拠の役割を果たすこと,最終的な設計案が段階を踏んで具体化されるようになること,などが確認できた.このように,提案手法は,創造的会議のプロセスを可視化し,その特徴を解明するために有効であることがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の目的に沿った初年度の研究計画の主な内容は,「創造的会議の具体的な状況設定を一つ決定した後,その状況設定を前提として,基本的なモデル化テンプレートの作成,知識生産プロセスの観察実験によるデータ化,実験データの提案モデルに沿った分析・コード化,の三つに取り組む」ことであった.
これに対して,初年度の実績としては,まず,具体的な状況設定の一つとして「玩具設計のワークショップ」を取り上げることに決めた.そして,その状況設定を前提として,知識生産プロセスをとらえるための2次元のモデル化テンプレートを作成した.さらに,そのモデルに基づいて,玩具設計における知識生産プロセスを解明するためのプロトコル分析手法を提案することができた.また,実際に何度か,想定した状況設定の下で,知識生産プロセスの観察実験を行い,それらのデータ化を進めた.さらに,得られたデータに対して,提案したプロトコル分析手法を実際に適用し,提案手法の適用性評価を行うととともに,提案手法によって知識生産プロセスのダイナミクスを視覚化できることを確認した.
以上の計画と実績の二つを対比すると,初年度は,ほぼ当初の研究計画通りに順調に研究を進めることができたと判断できる.一方で,計画を大幅に上回る進捗が見られたわけではないため,最終的な評価区分は,「(2) おおむね順調に進捗している」が妥当であると思われる.

今後の研究の推進方策

本研究では,まず,対象オブジェクト,オブジェクトに生じ得る変化(工程要素),変化をもたらす作用(作業要素)の観点から,知識生産プロセスの基本的なモデル化テンプレートを作成した上で,いくつかの具体的な状況設定のもとで,知識生産の観察実験を繰り返し,そこで得られた発話等の作業データを,提案モデルに従って分析,コーディングしていく.そして,知識生産プロセスのコード化データがある程度集まった段階で,データ分析によってその動特性を明らかにすることを狙っている.また,上記のオブジェクトに関するメンタルモデルを備えた複数エージェントのインタラクションとして,知識生産を内包したオペレーションのシミュレーションを実現し,それに基づいて,オペレーション設計に資する知見を得ることも目的である.
ここまでほぼ計画通りに進んできたことを踏まえ,今後は,まず,初年度とは異なる状況設定を対象として,これまでと同様の研究内容を実施することによって,提案モデルの一般化を試みる.2年目はこの作業が中心となると思われる.その先では,提案モデルによる創造的会議のコード化データが蓄積されてくるので,それに基づいて知識生産プロセスの動特性を分析していきたい.創造的会議のコード化データは,ある種の多次元時系列とみなせるので,ここでは,主として時系列データマイニングの手法を援用する予定である.また,知識生産を内包したオペレーションのシミュレーションモデル開発にも取り掛かっていく.そこでは,すべてをアルゴリズム化されたコンピュータエージェント間のインタラクションとしてモデル化するよりもむしろ,人の参画を許したゲーミングシミュレーションのフレームワークからスタートすることが効果的であると考えている.

次年度の研究費の使用計画

成果発表のタイミングのズレが主な理由である.国内学会誌への論文投稿と,国際会議での発表がこれにあたる.論文投稿料や国際会議の参加費などの費用が,次年度に,旅費やその他として計上されることになる.また,初年度の実験データの分析についても,第三者に依頼する(したがって謝金が発生する)部分が次年度に持ち越しになっている.
初年度の成果を国内学会誌や国際会議に投稿する準備は整いつつあるので,そのための費用(論文投稿料や国際会議の参加費など)として使用する計画である.なお,国際会議のための費用については,初年度の成果発表という面と,次年度以降の研究活動のための情報収集という面の両方の目的に資することになる.実験は,次年度以降も,対象とする状況設定を変化させつつ,継続していく予定なので,それらのデータも合わせた,実験データの分析作業のための謝金としても使用していく計画である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 成長要素と属性に関する集合的感性を可視化した玩具設計支援ツールの研究2013

    • 著者名/発表者名
      宮下瑛志, 安瀬美知子, 水山 元
    • 学会等名
      計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会 SSI2013
    • 発表場所
      大津市
    • 年月日
      20131118-20131120
  • [学会発表] デルファイ法を拡張したリスク事象発想プロセス支援手法の提案とその検証2013

    • 著者名/発表者名
      三木賢太郎, 安瀬美知子, 水山 元
    • 学会等名
      計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会 SSI2013
    • 発表場所
      大津市
    • 年月日
      20131118-20131120
  • [学会発表] 成長要素と属性を考慮した玩具設計支援ツールの研究

    • 著者名/発表者名
      宮下瑛志, 安瀬美知子, 水山 元
    • 学会等名
      2014年度精密工学会春季大会学術講演会
    • 発表場所
      東京

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公開日: 2015-05-28  

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