研究課題/領域番号 |
25560158
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
高野倉 雅人 神奈川大学, 工学部, 助教 (00333534)
|
研究分担者 |
滝 聖子 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (50433181)
山田 哲男 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90334581)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 育児活動 / 身体活動量 / 時系列分析 / 統計量 / 主成分分析 / ヒストグラム |
研究概要 |
平成25年度はライフログの収集と統計的分析,育児サービスの現状調査と成果発表を行った. ①ライフログの収集と統計的分析:平日昼間に自宅外での勤務があるイクメン5名とイクウーメン1名から,活動量計を用いて育児中心の休日と仕事中心の平日の身体活動量(METs, Ex)を計測した.さらにアンケートを用いて,活動量計測時の30分ごとの活動記録を取得した.使用した活動量計は,身体活動量に加えて,活動種別(歩行活動と生活活動)も記録される.はじめに活動量(METs)の時系列分析を行い,休日に高い強度を持つ育児活動を抽出するとともに,平日のMETsとの違いを分析した.食事や付添い,部屋の片づけ,屋内・屋外での遊びなど,子どもの見守りが必要な育児の際に,3.0-6.0METsと高強度の活動が計測された.活動種別は,屋内では主に生活活動で,屋外では主に歩行活動であった.平日でも,通勤などで高い強度の歩行活動が計測された.しかし,休日のほうが生活活動が多く,高い活動強度が長続きせずに間欠的であったなどの違いがあった.次に,活動量計で記録されたデータの基本統計量を求めて,主成分分析を行った.その結果,休日のほうが活動量(Ex)の平均値が低いが偏差が大きくなる傾向があったこと,歩行活動は主に3METs以上と高強度で生活活動は1-3METsと中・低強度であったことがわかった.また,活動内容ごとの活動強度と計測時間による分布を求めた. ②作業分析のための予備実験:購入した作業分析ソフトウェアを用いて,育児作業を詳細に分析するための予備実験を行った. ③現状調査と成果発表:イタリア・ミラノとアメリカ・ボストンにおいて,現地の研究者と育児サービスの社会環境について議論するとともに,現地の施設を訪れて現状を調査した.また研究や現地調査の成果を,44th Meeting of Decision Sciences Institute(米国Baltimore)と日本経営工学会秋季研究大会(埼玉・日本工業大学)で発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は経営工学の視点から,育児サービスの個人的・社会的・定量的な理解を目標に,小型センサで収集したライフログ情報を活用して,育児者や子どもの生活の質(QOL)向上を実現する育児サービスの技術革新を目指している.平成25年度は育児サービスの定量的な理解に焦点を当てて,イクメン・ウーメンのライフログ収集と,収集したライフログの統計的分析を行った.前述のように,小学生以下の子どもを育てているイクメン5名とイクウーメン1名から,ライフログ情報を収集して時系列分析や統計的分析を行った.その結果,育児中心の休日と仕事中心の平日の身体活動量の特徴と違いを明らかにして,高い強度の育児活動の抽出とその特徴の定量化を実現した.またイタリアや米国での現地調査も行い,日本と欧米の育児環境やサービスの違いを明らかにした.平成25年度の研究実施計画をほぼ達成できており,おおむね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,育児活動の定量的な評価指標の検討,ボトルネックの特定を行う.なおライフログの収集と統計的分析についても,被験者を増やして継続的に実施する. ①定量的な評価指標の検討:ライフログ情報のビックデータ性に着目して多変量解析を行い,育児活動や負担を定量的に把握できる評価指標を導き出す.例えば,主成分分析を利用して,イクメンの育児とそれ以外の生活活動との分離を試みる.この分析手法をイクウーメンに適用して,男性と女性の育児活動の違いや,育児ステージによる育児負担の移り変わりを定量的に捉える.主成分分析以外にも,他の多変量解析や時系列解析の有効性を検討して,ビッグデータであるライフログ情報の分析手法と評価指標の確立を目指す. ②ボトルネックの特定:育児者にとって負担の高い育児作業や時間帯を,根拠のあるデータにもとづいて特定する必要がある.①で定量的な評価指標を確立した後で,改善のボトルネックとなる育児作業や時間帯を同定する.また特に改善を要する育児作業を対象に,育児者の協力の下,活動量計を取り付けた状態で実際の育児作業をビデオカメラで撮影し,作業分析ソフトウェアを用いて詳細な作業分析を行う.その結果と活動量計で測定したライフログ情報との関係性を分析して,活動量計でどこまでボトルネックとなる育児作業を捉えられるかを検証する. ③現状調査・成果発表・情報収集:引き続き育児環境やサービスの現状調査を行う.また研究成果を国内学会や海外の国際会議で発表して他の研究者からの評価を仰ぐとともに,育児サービス研究の情報を収集する.具体的には,日本経営工学会春季大会・秋季研究大会,5th Int. Conf. on Applied Human Factors and Ergonomics(ポーランド)での発表を予定している.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成26年7月にポーランドで開催される5th International Conference on Applied Human Factors and Ergonomicsでの研究発表を予定しており,その参加費としての使用を予定している.国際会議の参加申込時期の関係で,平成26年度になってからの執行となったため,次年度使用額が生じた. 平成26年4月に,5th International Conference on Applied Human Factors and Ergonomicsの参加費として使用する.
|