研究課題
近年の長距離バスの大事故によって、運転士の疲労蓄積が安全なバスの運行に支障をきたしていることが心配されている。本研究では、限られた休息時間を効率よく取るための基礎となる研究を行い、眠気防止と疲労回復のための質の良い夜間仮眠と昼間睡眠をとることができる環境について研究することを目的とした。本研究では、質問紙調査と心拍数測定を行った。質問紙は、夜勤と睡眠、夜間作業における労働と健康に関する項目から構成された。心拍測定調査では、バス乗務時(運転・業務・睡眠・余暇)の心拍を連続測定し、それぞれの行動を遂行するための負担度を測定した。質問紙調査の結果、運転中に眠気を感じることがある運転士は全体の7割おり、その眠気の出現時刻の最頻値は3~4時頃であった。各バス会社では、運転士の眠気防止や疲労回復のために、二人乗務制をとっている。一人が運転をしている間、もう一方はバス車中で休息(仮眠)をとるようにしている。車中休養中、85.0 %の運転士はある程度の睡眠がとれており、その効果は疲労回復よりも眠気防止の方が高かった。心拍数の測定調査では、車中の夜間仮眠時と宿泊所の昼眠時の心拍数を測定した。その結果、昼眠時は仮眠時よりも心拍水準が高く、その差は統計的に有意であった。心拍水準に著しい個人差はあるが、仮眠時より昼眠時に心拍数が高くなる傾向は、1名の運転士を除いて全ての運転士に共通していた。睡眠の質に関する調査では、車中での夜間仮眠時と宿泊所での昼間睡眠時の運転者の心拍数を比較した。前者が後者より有意に低い水準を示したことは、仮眠時の方が宿泊所での睡眠時よりも深い睡眠を運転士にもたらしたことを示している。深夜勤は、日勤に比べて心身の負担が重く疲労を蓄積させやすい。本研究で得られた調査結果を踏まえて、①車内仮眠室の環境改善、②出先宿泊所の睡眠環境の整備、③夜勤適性の診断に関する提案をまとめた。
すべて 2015
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International Journal of Social, Behavioral, Educational, Economic and Management Engineering
巻: 9 ページ: 2473-2476