研究課題/領域番号 |
25560166
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 孝紀 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90325481)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 風力発電 / 数値風況予測 |
研究概要 |
現在,風況解析で主流の国土地理院の50m標高データでは,風車近傍の僅かな地形起伏が起源となる地形乱流(風の乱れ)の発生を数値的に再現できない.本研究では,METI(経済産業省)とNASA(米国航空宇宙局)が共同で作成した空間解像度30mの全球3次元標高データ(ASTER)と,JAXA(宇宙航空研究開発機構)とNASAが共同作成した空間解像度10mの全球3次元標高データ(ALOSデータ)に注目し,これを風況解析用データに自動変換する技術を開発した.その結果,一連の作業時間は,数日から数時間へ大幅に短縮された. 気象GPV(Grid Point Value)データは,データフォーマットの複雑さ,データ転送の遅延問題から,現在でも一部の研究者しか利用できない状況にある.一方で,気象GPVデータは,地球全体を網羅するものから,局所的な地域を密にカバーするものまで多岐にわたる.よって,これを風況解析に有効活用できれば,世界規模で風力発電の普及に大いに貢献できると確信する.本研究では,気象GPVデータをバイナリ形式からテキスト形式への変換する技術を開発した. 本研究の技術コアであるリアムコンパクトに対して,種々の大気安定度へ適用を可能とし,実際の複雑地形周辺気流の解析を行った.GPGPU技術を取り入れた.GPU(Graphics Processing Unit)は,もともとPCやワークステーションなどの画像処理をする一つの部品として,現在はグラフィックスシェーディングに特化した演算器を複数搭載するマイクロプロセッサとして欠かせない存在となっている.その結果,汎用的なPC1台でスーパーコンピュータに匹敵する計算時間の大幅な短縮に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画はおおむね計画通りに進んでいる.本研究にコア技術である計算コードの修整や改良も計画通りである.詳細な数値風況予測を行うために不可欠な地形データ構築技術は,地理情報システム(GIS)との連携に成功し,予定通りの成果を上げている.また,GPU技術の導入による計算時間の短縮もこれまでのところ予定通りの成果を上げている.
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今後の研究の推進方策 |
メソ気象モデルの出力結果をリアムコンパクトによる風況解析の初期条件および境界条件に取り込む手法を開発する.一連の開発が進めば,より現実的な風況場の再現が可能になる.過去の台風被害の原因解明から,数日先までの日々の風況予報(リアルタイムシミュレーション)が実現する.獲られた計算結果と現地の野外データを精査し,風車安全運転の具体的な指針が作成可能になる.また,日々の発電量も把握可能である. 同時に,電力会社や風車メーカー,風力発電事業者の協力を得て,地形乱流に伴うトラブルに遭遇した風車情報を入手し,その状況をコンピュータで忠実に再現する.上記で開発した技術に基づき,風車がいかに過酷な状況にさらされているかを定量的に明らかにし,発電量低下や風車故障の原因となるウィンドリスクを特定する.さらに,それらのウィンドリスクの状況を,最新のコンピュータグラフィックス技術を用いて3次元として立体的に視覚化する.
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