研究課題/領域番号 |
25560168
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
勝又 聖夫 日本医科大学, 医学部, 助教 (80169482)
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研究分担者 |
川田 智之 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00224791)
稲垣 弘文 日本医科大学, 医学部, 講師 (50213111)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サリン事件 / 長期間の健康不安 / 長期間の社会生活不安 / 社会安全システム |
研究実績の概要 |
オウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件をはじめとする一連の事件が発生してから約20年が経過した。NPO法人リカバリー・サポート・センター(R・S・C)は、サリン事件等共助基金が2000年に行った被害者検診を引き継ぎ、2001年より心身のケアを含めた検診や種々の活動を現在まで実施している。今年度は、昨年度実施した入力データのデータベース化を行い、この検診の推移と検診の必要性等についてまとめ、今後のR・S・Cの取組みと課題について考察した。 (1)検診受診者の経年的変化:検診の受診者率は、2000年の検診では、検診のお知らせを通知した被害者の約25%が受診した。最近の5年間の検診の受診者率は6.7%~10.3%で推移している。2014年は、1,207名に検診開催の通知を送付し、260名(21.5%)が回答し、そのうち101名(8.4%)が検診を受診した。住所不明等で戻ってくる封書も少なく、多くの被害者の方が、R・S・Cの活動を理解していると推定された。 (2)検診後のアンケート調査結果:検診終了後に毎回、検診についてのアンケート調査を行っている。その結果、検診開始当初より検診の必要性と継続性が受診者の9割以上で求められていた。さらに、不定愁訴が持続するにもかかわらず、「不安がなくなったか?」あるいは「検診を受けて知りたいことがわかったか?」の質問に対して、昨年(2014年)の検診では、約8割の被害者の方が「思う」と回答し、年々、その割合が増加している。この傾向からは、多くの被害者の方が検診を受診することで、不安の減少や心の安らぎが得られていると推定できた。 約20年が経過する現在においても、事件による不定愁訴が持続しているが、そのなかでR・S・Cが実施している検診は、心の拠り所として存在意義を見出している被害者が多く、今後も継続した検診を含む活動が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの構築が進み、今回は被害者のR・S・Cの活動に対する必要性や期待感などを解析した。その結果、不定愁訴としての身体的自覚症状や目の症状等が持続するにも係らず、R・S・Cの活動が不安の減少や心の安らぎの獲得に役立っていることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回は検診の必要性や期待感等を中心に解析した。 次年度は最終年度にあたるので、不定愁訴の持続性と検診の必要性等の関係性を中心に解析を実施する。特に被害者が記載した言葉を中心に、その経年的変化を捉える。さらに、長期的な健康不安や社会生活不安の変化を時系列で解析し、解析結果に基づき、被害者支援を実施する側と被害者支援を受ける側の問題点等を抽出し、社会安全システムに関わる諸問題を明らかにする。
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