研究課題/領域番号 |
25560169
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
島谷 祐一 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20154263)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 危機管理 / ラットナビゲーション / 報酬系 / BMI |
研究概要 |
本研究は、ラット等の小動物にGPSセンサー等を搭載した小型の装置を装着し、被災地において人やロボットの進入が困難な地点への自動誘導を行う技術の開発を目的とした研究である。ラットの脳報酬系を埋め込み電極で電気刺激して歩行運動を誘発し、さらにその刺激頻度に方位的重みづけを加えることで歩行運動に方位的偏向を与え、訓練を全く受けていない動物でも自由歩行の結果目的地に到達するような自動誘導アルゴリズムを完成させることが最終目標である。初年度である平成25年度は、計画どおりニクロム線を用いた埋込み型刺激電極の作成を行い、脳報酬系内側前脳束への電極の挿入および電気刺激を行った。約20匹のラットへの手術をおこない、そのうち半数以上で電気刺激による探索行動の活性化を確認した。さらに刺激条件の最適化を行ったところ、刺激頻度0.5~2Hz、刺激パルス100Hz-10連、電流強度150~250μAが最も有効な刺激であることがわかった。以後、方角による刺激強度の重みづけはこの範囲で行うことにし、方角誘導の実験を行った。この実験ではラットの体に方位センサーを搭載した装置を装着し、ラットの体軸が設定した範囲の方角を向いたときに刺激頻度を上げることでラットの運動量を偏向させ、その方角にラットの移動を促すことに成功した。実験はラットをフリームービング装置に繋ぎ、外部電気刺激装置を方位センサーからの出力で制御することによって行った。行動可能範囲の制限から120cm x 60cm のフィールドでの実験であったが、2方向に明確な誘導を行うことができた。このデータを基に方位センサーと小型電気刺激装置を搭載したバックパックの設計を行い、その試作機を作成した。このバックパックによって今後フリームービング装置の束縛を離れより広いフィールドでの実験が可能になるものと期待される。以上の成果を自動制御学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年(初年度)の研究は研究計画に沿って円滑に進めることができ、その到達目標をほぼ達成することができた。これは電極の製作や手術を問題なく計画どおりに行うことができたことに加え、電気刺激の効果として動物が予想どおりあるいは期待以上の行動を示したことによる。これによって狭いフィールドにおけるラットの方角誘導という初年度の達成目標は手術に成功した動物のほぼすべてにおいて事前の学習訓練なしに成功させることができた。このことによりバックパックの開発にかける時間を当初の計画より多くとることができ、当初2年目以降に着手する予定であった小型電気刺激装置を搭載したバックパックの開発を開始するところまで研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果がほぼ計画どおりの達成度を示しているので、今後も当初の計画に沿って研究スケジュールを進める予定である。ラットに装着するバックパックの開発については、すでに予定を繰り上げる形で試作品の製作が完了している。今後はこのバックパックが設計どおり動作するかどうか、またラットの行動に対するその効果がこれまで使用してきた外部電気刺激装置と同様であるかどうかを確認する。 バックパックの設計については若干の変更を行った。すなわち最初の計画では位置センサーのみを搭載してラットの進行方向の方角を検出しその方向に電気刺激強度の重みづけを行う予定であったが、いままでの研究結果より位置センサー(GPSセンサー等)に加えて方位センサー(デジタルコンパス)を搭載することで、より簡単なアルゴリズムで効果的にラットを方位誘導できることが判明した。また、無線通信によってバックパックに設定する刺激条件や自動誘導プログラムのアルゴリズム変更が可能になるような仕様を現在検討中である。これによってラットの移動行動を観察しながらより適切なアルゴリズムに切り替えて目的地自動誘導を行う総合的なシステムを構築することを目標としている。 さらに現在より広いフィールドを設定し、障害物等を設置した条件下での実験を行っていく方策である。報酬系の刺激は様々な行動とリンクさせることによって、様々な特定行動をラットに誘発させうることが分っている。今回の研究は特定方位への探索・移動行動をリンクさせる目的で報酬系を刺激しているが、それが純粋に方位移動を目標とした行動を誘発しているのか、それとも別の何かの特定刺激を求めての行動と混在していないかを慎重に調べる必要もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究終了時において若干の次年度使用額が生じた理由であるが、主な理由はラットの手術の成功率が当初の予想より高かったことにより、実験に使用する動物の数を減少させることができたことである。これにより電極埋め込み手術に使用する手術器具・消耗品も当初の見積もりより少ない量で済んだ。このため従来所有していた器具・消耗品ですべての手術をまかなうことができ、新たに手術器具・消耗品を補充購入する必要がなかった。 次年度は手術用器具・消耗品が不足することが明らかなのでその購入に充てる。また、バックパックの製作に必要な開発費に使用する。開発環境としてのソフトウェアの整備および電子消耗部品購入費として使用する計画である。また、より広い実験フィールドや障害物の作成を行う必要があるので、その材料費として使用する計画である。その他バックパック装置は10~20台製作する予定なので、装置量産やフィールド設置の補助を行う学生アルバイトの人件費・謝金等に使用する計画である。
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