研究課題/領域番号 |
25560172
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今泉 俊文 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50117694)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 活断層 / 佐賀平野 / 吉野ヶ里遺跡 / 極浅層反射法地震探査 / 最新活動 / DEMデータ |
研究概要 |
吉野ヶ里遺跡や三内丸山遺跡など国を代表する遺跡は,活断層の直上や延長線上(あるいは近傍)に位置することが,詳細な活断層の判読調査から指摘されるようになってきた.九州を代表する吉野ヶ里遺跡(弥生時代に繁栄した)は,佐賀平野北縁活断層帯(地震調査推進本部が新たに認定した活断層)の東延長部に位置しており,この断層の活動に伴って遺跡がある地形面が変位していることが指摘されている.弥生時代から歴史時代の断層活動を知る上で,またこうした断層活動に伴う自然災害が過去の文化・文明にどのような影響を与えたのか,現代社会が受ける自然災害とは何が共通して何が異なるか,過去を知る基礎的な調査から将来の防災対策が見えてくる. そこで,非破壊的な調査が求められる史跡地およびその周辺地域において,空中写真と大縮尺地形図および詳細なDEMデータ等を用いて,佐賀平野北縁地域の活断層判読を行った.その結果,後期更新世~完新世の扇状地面には,明瞭な断層変位地形が断続的ではあるが確認された. 次に,これらの分類図をもとに断層を横断する極浅層反射法地震探査を実施し,地表の崖と地下の断層構造の関係を明らかにすることを目指した,反射法地震探査は,完新世の断層が伏在すると考えられる完新世の地形面と明瞭な低断層崖が認定される更新世段丘面の双方で実施した(なお,調査地域は九州を代表する水田地帯の一つでもあるので,農作業の障害にならないように時期・方法の点で配慮した). また,それぞれの地形面の形成時代を把握するために,分類された各地形面の表層の構成層を簡易ボーリング調査を実施し,断層の最新活動時期の把握,変位量と平均変位速度の推定のための基礎資料とした.これらの調査結果を総合して本活断層帯の完新世~歴史時代における活動性の評価に資する基礎資料を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本調査地域は九州を代表する水田地帯の一つで,現地調査では農作業の状況などを十分に配慮しながら行う必要がある.これには水田の裏作(二毛作)時期との境の時期が有効であるが,この時期は季節(天候)によって変化する.特に反射法地震探査は,農道の一部を使用して実施するので,調査時期が農作業の状況に大きく左右される.また,地下構造探査においては,他研究機関の資材を借用したために実施時期にも制約を受けた.これらのことから,当初の実施予定から遅れを生じ,結果的には地下構造解析作業までには至らず,全体の調査結果の収集とそのとりまとめに関しては現在継続中である. しかし,その一方で地表調査(地形・地質)においては,これまでほとんど調査が行われなかった沖積地の微地形分類が進展して,断層活動時期と関連にして(特に最新活動を検討する上で)重要な基礎資料を得ることが出来た.また,歴史資料と微地形分類に関しても活断層活動に伴って生じたと推定される地変(地表の被害)が歴史文化にどの様な影響を与えたのか,その手がかりとなる官道・官衙などの配置が微地形分類上に位置づけられ,断層活動時期や断層変位の実態を検討する上で重要な基礎資料を得ることが出来た.また,この地域の詳細DEMデータを取得して解析を行い,断層変位地形と微地形を表示した.
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今後の研究の推進方策 |
極浅層反射法地震探査は,断層崖を横断する2測線と伏在すると予想される沖積面で2測線,それぞれの測線では,P波とS波の両方の探査が実施出来たので,先ずこれらの解析作業を全て完了させる.その上で,これらの解析結果と写真判読や地表調査で得られた結果を照合して,それぞれの場所での地表~地下の断層構造の総合解釈断面を基に本活断層の活動性の評価を行う. また,申請時の計画では吉野ヶ里遺跡と同様に近傍に活断層が推定されている青森県三内丸山遺跡においても九州と同様に地表~地下構造の調査を実施する予定であったが,丸山地区においては,事前調査で地下に厚い火砕流堆積物が分布することが確かめられたので,震源がマンパワーによる極浅層反射法地震探査ではイメージングを得ることが難しいと予想される. そこで,三内丸山遺跡周辺では表層の地形地質調査を主に行い,断層変位の微地形調査から断層活動時期,断層変位量,変位速度などに関する基礎資料を得ることに主眼を置く(特に遺跡地周辺での断層変位地形に関してはこれまで研究例がない).活断層及び変位地形の詳細なマッピングの結果,地下構造探査の測線の候補となり得る場所を選定して,震源をパワーアップした反射法地震探査の実施を今後に向けて計画する予定である.
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