研究課題
挑戦的萌芽研究
我々は、地磁気を利用して津波性堆積物の定置機構とその年代決定法を確立することを目的として、平成25年度の研究を実施した。本年度は、沖縄県の石垣島・宮古島および東北三陸海岸に分布するサンゴ礁起源と火山岩起源の津波性巨礫の採集調査とそれらの放射性炭素年代測定を実施し、これらの研究に補助金を利用した。本研究の目的は、数百年に一度しか発生しない巨大津波災害の時期と規模を、海岸部に打ち上げられた海中起源の巨礫を利用して推定することである。これまでの放射性炭素年代を用いた研究では、海中から沿岸部に巨礫が移動したことは推定できたが、その巨礫がその後の津波で再移動したかどうかは決定できなかった。しかし、巨礫の持つ残留磁化が現在の地磁気と異なることを利用すれば、複数回の移動を同定でき、さらに移動後の経年時に当時の地磁気と平行に新しい残留磁化を獲得することと磁性の緩和理論を適用することで、複数回の津波発生時期を特定することに成功した。この研究と津波の数値シミュレーションとを組み合わせることで、過去に発生した津波の規模と時期を定量的に復元できる。この手法が確立されれば、世界中の津波リスクにさらされている地域で、津波の時期と規模を同時に推定することができるために、その地域の防災減災に役立てることができる。しかしながら、磁性の緩和理論から推定される一回目の津波年代と放射性炭素年代とに一定の食い違いが生じていることが研究を遂行しているなかで判明してきた。今後は、この違いの原因を追究してゆく。
2: おおむね順調に進展している
申請書で掲げた研究の目的は、おおむね達成しているが、地磁気を利用して予想した年代と放射性炭素年代とが食い違っており、正確な津波年代推定に利用できないことが判明したためである。
放射性炭素年代との食い違いは、実験中に試料が膨張することからヒントを得て、試料中の磁性鉱物が熱膨張することが原因ではないかと、仮説を立て、それを検証するべく磁性鉱物の熱膨張率を既存研究から見つけ出し、さらに加熱時間を変える実験を繰り返し実施することで検証をおこなっている。その結果、一部の年代の食い違いは磁性鉱物の熱膨張で説明できることが分かった。それ以外の年代の食い違いは磁性の緩和理論を修正することが必要であることがわかり始めている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
平成25年度東北大学大学院理学研究科技術部報告
巻: 26 ページ: 21-26
Nature Communications
巻: 4 ページ: 1-8
doi:10.1038/ncomms3649
http://www3.tech.sci.tohoku.ac.jp/HP/?p=1682