研究課題
環太平洋沿岸部は常に津波のリスクにさらされているため、津波の履歴と規模を知り、費用対効果が見合った地域防災計画を策定することは必須である。津波の履歴は古文書や砂質の津波堆積物の解読から判読されていたが、規模を推定することは困難であった。一方、津波によって、海岸が剥ぎ取られ巨大な岩塊として浜辺に打ち上げられることは、2011年の東北大震災でも知られていて、津波の規模を推定することを可能にする。しかし、このような岩塊が火山岩の場合、津波の規模は推定できるものの、年代を推定することができない。そこで本研究では、一見津波とは全く関係のない地磁気を利用して、日本沿岸に散点的に分布する津波起源の巨礫の定置年代を推定する方法を提案した。初めての試みのため、まずは放射性炭素年代によって打ち上げ年代が既に判明している、石垣島サンゴ礁起源の津波性巨礫に着目した。石垣島宮良湾の津波性巨礫は、1771年の明和大津波をはじめ、過去2500年の間に8回の巨大津波によって運搬されている。したがって、一度浜辺に打ち上げられた巨礫も再運搬されている可能性があるものの、放射性炭素年代推定法はこの再運搬を確かめることができない。地磁気は過去78万年間”北”を指し示している。津波によって打ち上げられた巨礫は、打ち上げられてからの時間に比例して、地磁気と同じ方向に新しく磁気を獲得する。この磁気の方位とその消磁温度を利用することで巨礫の定置履歴とその年代が推定できる。この新しい年代推定法を石垣島産津波巨礫に適用した結果、明和津波で運搬された巨礫よりも巨大な巨礫が、明和以前の津波で運搬され、明和津波では移動していないことが判明した。これは過去において明和津波を凌ぐ津波が来襲していることを示していて、津波防災にとって重要な知見である。さらに天然記念物の”津波大石”は2回の津波で陸地に打ち上げられたことも判明した。
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Geology
巻: 42 ページ: 603-606
doi: 10.1130/G35366.1