自然災害が発生した場合,被害範囲・程度の早期把握は,緊急対応をとるために極めて重要である.災害状況の早期把握には航空リモートセンシングが多用されており,被害が広域にわたる大地震や,地上からのアクセスが困難な山間地域などの被害把握に力を発揮している.しかし,空撮による映像・画像は,可視域および近赤外域の光を利用しているため,太陽光のない夜間においては,基本的に情報収集が困難になる.一方,熱放射を観測する熱赤外センサは夜間でも利用可能である.本研究では,最近,小型化・高性能化してきている熱赤外センサによる空撮画像を用いて,建物損壊などの災害状況を把握する手法の開発を目指した. 2012年つくば市竜巻を撮影した空撮熱画像を用いて,建物被害の判読可能性を検討した.その結果,建物屋根の表面温度は,材質,色,勾配,日照条件により大きな影響を受けるが,温度画像と温度勾配画像を組み合わせて用いることにより,とくに被害が屋根に現れる竜巻や台風による被害把握への利用の可能性が示された.しかし空撮熱赤外画像は解像度が低いため,有人ヘリに加えて,低空を飛行可能な無人航空機(UAV)からの撮影を検討した.津波被災地におけるUAVから撮影した光学画像を用いて,3次元建物モデルを構築する試験的な研究を行い,建物上面や側面の被害把握に有効であることを示した.UAVへの熱カメラ搭載に関しては,幾つかの組合せによる可能性を具体的に検討した.
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