研究課題/領域番号 |
25560176
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
青山 隆司 福井工業大学, 工学部, 教授 (60350807)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海ゴミ / 衛星リモートセンシング / 高解像度衛星画像 / スペクトル / 回帰直線 / SAM |
研究実績の概要 |
平成26年度に実施する予定の研究内容は、日本海を漂流する不法投棄ゴミを含む海ゴミを、日本海沿岸域に漂着する前に海上で発見し監視する手法を開発することである。小規模(平均的には数十センチ)の海ゴミは、現在入手可能な最も解像度の高い衛星画像(解像度:1~2m)を用いても直接確認することはできない。そこで、漂流ゴミを直接同定するのではなく、海ゴミを含む画素と含まない画素のスペクトルの違いに着目し、その違いを示す効果的なパラメータを見出し、海ゴミを含む画素の候補を定量的に抽出する手法の開発を試みた。まず、沿岸域の海を撮影した高解像度衛星画像を用い、その画像データの持つ4バンド(R, G, B, NIR)から任意の2バンドを選択し、2次元散布図(2D scatter plot)を作成する。この散布図上で多くの画素が集中する場所から離れた地点に存在する画素程、そのスペクトルが周囲の海域に対応する画素のスペクトルと異なることを示しており、海ゴミの候補と考えられる。このスペクトル異常の程度を表すパラメータとして、散布図上の各点の回帰直線を引き、その回帰直線と各点(画素)の距離を用いる手法を開発した。つまり、回帰直線からの距離に対するヒストグラムを作成し、距離の大きい場所に孤立して存在する画素を海ゴミの候補として抽出する手法である。 また、現在他の手法として、4D空間(R, G, B, NIR)でのSpectral Angle Mapper(SAM)を使用する方法を試みている。この手法は、回帰直線からの距離を用いる手法に比べ、よりシンプルであり、最終的に海ゴミ候補となる画素を自動抽出することを目指すためには使いやすい方法であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に行った太平洋津波瓦礫の抽出手法の開発結果を受け、その応用として、日本海の海ゴミの抽出手法を開発できると考えていたが、対象の海ゴミのサイズが小さいため、津波瓦礫とは全く異なる手法を開発する必要に迫られた。具体的には各画素のスペクトルに着目し、周囲の海、あるいは波の画素の持つスペクトルと、海ゴミを含む画素のスペクトルの違いを指標値として取り出し、その値がある閾値を超えた画素を、海ゴミを含む画素として取り出す手法である。この指標として、2D散布図上での回帰直線からの距離を用いる方法については既に幾つかの学会発表、国際会議での発表とproceeding、大学紀要の論文として公表している。また、現在新たな指標値として、SAMによる4次元空間内の角度を用いる手法を確立すべく研究を行っているところである。平成27年度中には、この手法の妥当性を検討し、抽出手法の自動化まで持っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
海ゴミの抽出手法として、現在新たな手法(SAMを用いる手法)を検討し、有用性、効率性につき確認を行っている。この作業を進めるとともに、さらに他の手法の検討も進めていく。この手法が有効に実利用されるためには、作業の自動化が必須であり、そのために相応しい手法の開発、選択が必要となる。従って、いくつかの手法を開発・検討し、自動化を含めた海ゴミ自動検出システムとして最も有効な抽出手法を開発すべきであり、最終年度となる平成27年度はここに注力する。さらに、当初予定していた海流シミュレーションによる不法投棄海域の特定に向けての研究は、海ゴミ抽出手法が確立した後に考慮することとする。この点については、オイル漏れを検出し、その後の移動を予測するシステムなど他の研究により既に開発された海流シミュレーションシステムが存在するため、新たにシミュレーションシステムを開発しシミュレーションを実施するより、既存のシステムを利用するほうが効率的であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に購入予定していた画像解析ソフトが、交付額の減額により購入できなくなったため、平成26年度に次年度使用額が発生した。平成26年度交付額は、当該年度に使用したが、この繰り越し分がほぼそのまま平成27年度(最終年度)への次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度となる平成27年度は、平成25年度に購入できなかった画像解析ソフトを新たに購入することはせず(旧バージョンのソフトで対応)、衛星画像の購入や成果発表用の各種の支出(国際会議出張費、論文校正費用など)、解析用PCの周辺機器の充実に充てる予定である。また、研究遂行中に必要が生じたソフトウェア(海流シミュレーション用ソフトウェアなど)があれば購入する。
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