研究課題/領域番号 |
25560178
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
大塚 悟 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (40194203)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 斜面危険度評価 / 豪雨 / 地形 / 地質 / 実効雨量 / GIS |
研究概要 |
地理情報システム(GIS)を用いた豪雨時の斜面のリアルタイム危険度評価を目的に、表層地盤の強度特性について中越地震における旧山古志村地区の表層崩壊を広域振動台試験と捉えて逆解析を実施した。その際に、表層崩壊の発生特徴に関して、①地質、②河川や沢などの水源との距離、③地形,④震源を通過する断層線からの距離、による表層崩壊の発生率に関して統計分析を実施した。その結果、表層崩壊は①地質による差異がないこと、②水源からの距離があると崩壊発生率が一定値に収束すること、③表層崩壊は斜面の傾斜角度によって崩壊発生率が整理できること、④断層線からの距離によって崩壊発生率が低下すること、を明らかにした。これらの結果に基づいて、表層地盤の強度は被災地でほぼ同じと仮定して正規分布で表現すると、上記の①~④の特徴を適性に表現して逆解析できる。得られた強度の平均値は表層風化土を内部摩擦角30度、風化層を1mとして算出する地盤強度とほぼ等しいことを示した。これにより、強度については確率的表現の適用性が確認されたことから、今後は豪雨時の斜面崩壊事例を用いた浸透特性の確率的表現の適用性に関する検討が必要である。 豪雨時の斜面崩壊データに関しては、平成16、23年の新潟豪雨災害の斜面災害について崩壊の位置、形状に関する電子データを整備した。平成16年度災害について降雨の時系列を用いた斜面危険度の分析を実施したが、被災地の西山丘陵と東山丘陵では異なる分析結果が得られた。西山丘陵では地質や斜面傾斜角度と相関のある分析結果が得られたが、東山丘陵では有意な相関が得られず、分析に課題が残された。豪雨時のリアルタイム危険度評価に関しては土壌雨量指数の時間変化を用いたが、その適用性について更なる分析が必要である。 次年度には平成23年度災害に対して統計分析を実施して豪雨時のリアルタイム危険度評価システムの構築を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は大きく2つの項目について実施した。1つは斜面表層地盤の強度特性に関する検討であり、他方は豪雨時の斜面災害事例の統計分析である。1つ目に関しては、新潟県中越地震の斜面崩壊事例の統計分析と逆解析による検討を実施したが、当初に予定した研究成果を得ることが出来た。一方、豪雨時の斜面の統計解析は平成16年度新潟水害の崩壊事例を用いた検討を行ったが、西山丘陵の被害に対して東山丘陵の被害分析の結果がやや不十分な結果であった。また、リアルタイム斜面危険度評価を目的に土壌雨量指数を用いた分析も実施したが、基礎的検討に終始して、新しいシステムを構築するには至っていない。しかし、トータルとしては当初予定していた研究を実施していると言えることから、概ね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の研究計画に基づいた研究を実施し、研究成果をとりまとめる。 (1)平成23年新潟水害の斜面災害の統計分析:今年度に被害データの収集・整備を実施した。次年度には統計分析を行い、斜面危険度評価の基礎的データを得る。 (2)(1)を用いた豪雨の時刻データの活用の検討:リアルタイム斜面危険度評価には豪雨の時刻歴と斜面への浸透能を考慮した分析が必要である。浸透能は地質や風化によって異なることも考えられるが、地域による斜面崩壊の差異に基づいて、可能な分析を行う。 (3)リアルタイム危険度評価手法の開発:(1)、(2)に基づいてリアルタイム危険度評価法を開発する。 (4)平成23年度新潟水害を用いた危険度評価手法の検証:(3)で開発した手法の適用性を検証する。
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