研究実績の概要 |
本研究はGIS(地理情報システム)を用いて,豪雨時の斜面表層崩壊のリアルタイム危険度評価システムの開発を試みた。システム開発に必要な斜面表層の強度や浸透特性は過去の崩壊事例の逆解析により同定する手法を用いた。表層強度は平成16年中越地震における広域斜面災害を広域の実規模振動模型試験と捉えて逆解析を実施して決定する。斜面の表層崩壊は地域に特有の地質の影響の少ないことから,風化層の強度を広域的に調査可能である。震源からの距離と斜面角度を変数に崩壊事例のばらつきを取り入れて強度の逆算を実施した。この調査は事前検討を踏まえていたために,新規性,独創性に優れた結果が得られた。一方で,新潟県では平成16年,23年福島・新潟豪雨災害により甚大な斜面災害が発生している。被災地域の崩壊データを国土交通省や新潟県の協力を経てGISに整備して,被害の特性を多面的に分析した。平成16年災害のデータは越後平野の東山丘陵と西山丘陵で発災したが,2つの地域で異なる特性が現れた。データの整理は面積比による被災率を用いて整理したが,西山丘陵では斜面角度に対して高い相関が得られたが,東山丘陵では相関が得られず,地域特性の影響の大きいことが分かった。豪雨時の斜面崩壊は地山の保有する水分量に影響されることから,気象庁の提案する土壌雨量指数を用いて崩壊事例との相関を調べた。平成23年災害のデータを入手して分析し,斜面災害との相関を明らかにした。時刻に伴う斜面の危険度変化をリアルタイムで表現する方法を開発したが,用いたデータの斜面崩壊時刻が明確でないことから,定性的な検討になり,モデルの高度化と検証が課題に残された。平成26年には広島で甚大な豪雨による斜面災害が発災しており,防災の視点から斜面災害の場所と時刻に関する予知モデルの高度化の必要性が再確認された。
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