研究課題/領域番号 |
25560183
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 富士常葉大学 |
研究代表者 |
田中 聡 富士常葉大学, 環境学研究科, 教授 (90273523)
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研究分担者 |
重川 希志依 富士常葉大学, 環境学研究科, 教授 (10329576)
立木 茂雄 同志社大学, 社会学部, 教授 (90188269)
柄谷 友香 名城大学, 都市情報学部, 准教授 (80335223)
河本 尋子 常葉大学, 環境学部, 講師 (10612484)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 借り上げ仮設住宅 / 再建過程 / 復旧・復興工学 / エスノグラフィー調査 |
研究概要 |
平成25年度は、メンバー全員で名取市の借り上げ仮設住宅居住者、借り上げ仮設住宅経験者、さらに集合仮設住宅居住者への調査に集中した。仮設住宅被災者のプロファイルを大別し、それぞれの典型的な被災者に対してエスノグラフィー調査を実施した。調査は、それぞれの住宅にお伺いし、1軒あたり2時間程度のインタビューをおこない、災害発生直後から調査時点までの生活再建状況について情報を得た。ここで得られたデータを分析し、分散居住する被災者の生活再建過程を分析した。これら分散居住する被災者は、集合仮設住宅に比べて、支援の量や種類が少ないものの、その分を自分で補うことによって、比較的自立した形での生活再建過程が多く存在することが明らかになった。さらに名取市において、被災者、行政、ボランティアなどが参画したワークショップを数回開催し、分散居住者の生活再建にかかる課題の抽出と構造化など現状に関する知見を共有するとともに、その解決の方向性について検討した。最後に、これらの結果を分析し、名取市の生活再建過程のモデルを検討した。 楢葉町については、楢葉町役場を支援しながら、仮設住宅被災者のプロファイルを調査した。しかし、東京電力による賠償の進捗状況など、役場では把握できない生活再建上の重要情報が多く、調査対象者を絞り込むまでに至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の当初計画では、①分散居住する被災者へのエスノグラフィー調査、②参画型ワークショップによる課題の抽出と構造化、③生活再建モデルの検討、の予定であった。名取市については、全ての研究項目について十分な調査を行うとともに、現状の把握と生活再建モデルの提案まで達成した。また、これらの分析を元に、数編の学術論文を発表しており、ほぼ予定どおり進捗していると考えている。一方楢葉町においては、調査対象者の絞り込みに時間を要したが、おおむね対象が絞り込める状態になっており、次年度より具体的な調査が開始できるものと考えている。以上の状況により、現在までの達成度としては、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、名取市では平成25年度に検討された調査フレームに則って、質問紙を設計し、調査を実施する予定である。対象者は、今後数年間のパネル調査が可能なように、プロファイルを検討する。さらに、平成25年度に引き続いて、名取市の仮設住宅被災者に対してエスノグラフィー調査を実施し、特にまちの再建過程と個人の生活再建過程の関連性に着目し、物理的なコミュニティを構成することが難しい借り上げ仮設住宅被災者がどのようにまちの再建過程に関わっているかについて分析する。一方、楢葉町においても、仮設住宅居住者に対するエスノグラフィー調査を開始し、名取市との比較による、生活再建過程の分析をおこなう。 最後に、分散居住する被災者への合理的な生活再建支援モデルとして、長期にわたる生活再建相談過程を管理するケースマネジメント(個を中心として必要な資源・情報・フォーマルおよびインフォーマル支援者とつなぐ)の方法、ならびにソーシャルメディア等を活用した実現化方策を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は楢葉町の調査が予備調査にとどまり、本格的なエスノグラフィー調査が実施できなかったため、そのために計上していた旅費や謝金を次年度に使用することとした。 平成26年度は、楢葉町のエスノグラフィー調査を実施する予定であるため、調査に必要な旅費、データ整理のための謝金等に利用する予定である。
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