医用画像におけるマルチモーダル・マルチスケール画像解析の期待が高まっている.このためには画像間比較のための高精度な位置合わせ手法が必要となるが,解像度を含めた画像特徴が大きく異なるため従来の手法では解決が難しい.我々はこれまでにMR画像と病理画像とを対応付ける研究を行ってきている.この研究において2つの課題に取り組んだ.一つは切り出した組織表面の光学像を仲介とした位置合わせ手法の構築であり,もう一つは病理像とMR像の対応付けを容易にするための,病理像に対する画像処理である. 前者については,ブタ脳から取得した組織光学像,病理画像を使用し,病理画像と光学像のアフィン変換による位置合わせを実施した.さらに,病理画像と光学像との位置合わせ手法の高精度化を目的に,光学像撮影時の照明光の検討や,組織壁面の除去手法の導入を行い,良好な結果を得た. 後者については,MRIと病理画像間で解像度が100倍以上異なるため,相互情報量などの従来の評価指標では高精度化が難しい.特に病理画像はCT画像やMR画像と同等の解像度で観察すると組織間のコントラストが低い場合がある.このとき,適切な画像位置合わせは非常に困難となる.そこでわれわれは病理画像に対してテクスチャ解析を行うことにより,ダウンスケール後の病理画像において組織間の違いが明瞭に描出できるかを検討した.ブタ脳を対象に撮影実験を行い,提案手法を適用した.その結果,灰白質と白質の違いが強調可能であることを確認した.また,MR画像との位置合わせを実行し,良好な位置合わせ結果が得られた.
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