研究課題/領域番号 |
25560196
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 勉 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50136214)
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研究分担者 |
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
三浦 治郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (70437383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 象牙質 / 老化 / 糖化 / 蛍光 / メイラード反応 / 押し込み試験 |
研究概要 |
歯の老化とはいったい何かを考察し、そこから歯の治療に対する指針を得たい。老化にはさまざまな原因があるが、われわれは象牙質の糖化に着目した。糖化によって糖化最終産物(AGE)が生じ、それがコラーゲンの架橋となって力学特性が変化すると予測した。すなわち、老化すると象牙質の硬さが増す。さらにAGEには蛍光性のものも存在するため、老化によって蛍光強度が増すことも予想される。機械特性を調査する場合、ハイドロオキシアパタイトの影響を除去するため脱灰した象牙質を用いる必要がある。本研究では以上の予測のもとに、機械特性と光学特性の変化を、若年者と高齢者の象牙質で調査した。 その結果、高齢者の象牙質は若年者よりも硬くなること、いずれも歯根部が歯冠部より硬くなることがわかった。蛍光強度も予測通り、高齢者が高強度であり、またいずれの試料も歯根部の蛍光強度が歯冠部より大きかった。 人工的に糖化するため、リボース溶液に脱灰した象牙質を数週間浸し、機械特性と蛍光特性を調査したところ、硬さと蛍光強度は増加した。一連の調査では高齢者のAGE量が若年者より大きいと示唆されるので、免疫染色によってAGEの蓄積を確認した。その結果、加齢によるAGE量の増加、ならびに人工糖化によるAGE量の増加が確認できた。 以上の結果から、糖化による歯の老化進行が説明できる。これら一連の研究成果は論文としてまとめ報告した。 現在は電子顕微鏡によって象牙質コラーゲンがどのように形態変化を起こすのか、また象牙細管と糖化の関係を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題で新しい知見を得ることができ、その成果を国際学術誌に掲載できた。また、国内学会においては優れた内容が評価され、優秀発表賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光強度計測は、光源の強度変化と試料表面の影響を受けるため、現在はパルス光励起による動的蛍光波形からAGEの存在を確認しているので、これを継続する。そのための顕微蛍光システムに改良を加える。また、コラーゲンゲルを糖化させ、電気泳動による分子量変化を確認したい。加えて象牙細管まわりの蛍光像と電子顕微鏡像を撮像し、象牙細管を通じた象牙質循環液と糖化の関連を考察することで、歯の老化に関する知見を得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入予定の機器の仕様が変更されたため、本年度は予定機器を購入せず現有の装置に手を加えて使用した。次年度に新たにパーツを購入して目的に応じた内容に改良する。そのための費用が必要となった。 上述のように、目的にあった仕様に機器改良するために残額の一部を使用する。また抗体など各種薬品の購入、ならびに成果発表の旅費に充当する。以上の予算使用によって研究を進め、次年度は歯の老化に関するさらなる考察を行い、「歯は老化するのか」という課題の結論を得たい。
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