研究課題/領域番号 |
25560202
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 佳樹 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70284528)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プロテインキナーゼ / 分子プローブ / 蛍光色素 / 分子イメージング |
研究概要 |
平成25年度は、プロテインキナーゼ蛍光プローブとして、基質ペプチドにリン酸化部位捕捉ユニットとして、2核亜鉛錯体を導入し、さらに分子の両末端に蛍光エネルギー移動可能な2種の蛍光基を導入した分子プローブを設計し、合成を検討した。2核亜鉛錯体用のリガンドとして、PhosTag型分子を合成し、ピリジン環の一つからアルキルアミノ基を伸ばし、固相合成樹脂上でペプチドへの導入を検討した。しかし、種々の保護基と縮合剤を検討したが、目的物は得られなかった。そこで、PhosTagユニットをリジン側鎖に縮合してアミノ酸誘導体としたのち、ペプチド固相合成により基質ペプチドに連結することを試み目的物を得た。ところが、次にフルオレセインとローダミンを基質ペプチドに導入後、同様の反応でリガンド部位の導入を検討したところ、蛍光基が副反応により壊れることが分かった。そこで、種々の蛍光基を検討後、クマリンとトリプトファンの組み合わせで目的物が得られることが分かった。 これとは別に、高分子錯体型の蛍光プローブの開発も検討した。こちらについては、内部標準としてCy5をカチオン性基質ペプチドを側鎖に有するデキストランに導入し、一方、キナーゼ応答型の蛍光を与えるためのTAMRAをポリアスパラギン酸に導入したポリマーも合成して両者を混合し、ポリイオン錯体型ナノ粒子を形成した。得られたナノ粒子はCy5の蛍光は保持される一方、TAMRAの蛍光は大きく消光した。一方、標的キナーゼで側鎖の基質ペプチドをリン酸化するとTAMRAの蛍光は大きく回復し、両者の蛍光強度比を取ることで、正確にキナーゼ活性が評価できた。蛍光強度比を用いてキナーゼ阻害剤の阻害定数を評価することも可能であった。本プローブは、キナーゼ蛍光プローブとして、特に濃度や組織・細胞の厚みの影響を受けずにin vivoや培養細胞で正確に活性を評価できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた分子プローブの合成は、当初かなり予想外の副反応により多くの検討を要したが、平成25年度中に目的物を得る条件が確立した。これにより、今年度、当該分子プローブの評価が可能となっている。 また、新たに高分子錯体型の分子プローブを設計し、開発に成功した。こちらに関しては、標的プロテインキナーゼの活性を2波長の蛍光強度比を用いて正確に評価できること、キナーゼ阻害剤の評価にも適用可能なことを見出しており、すでに実用的な蛍光プローブの開発に成功したといえる。 平成26年度にさらに実用的な改良と評価を加えることで、当初の目的を十分達成できるところまで来ており、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度得られた成果をもとに、プロテインキナーゼ蛍光分子プローブとしての有用性を立証していく。 まず、PhosTag型分子プローブに関しては、基質部分のリン酸化に伴う蛍光エネルギー移動効率の変化を評価し、その性能と、計測最適条件を求める。、あた、万が一、感度が不足する場合には、よりリン酸化部位への結合力の高いジルコニウム錯体の導入を、すでに確立した合成法により検討していく。 高分子型プローブに関しては、こちらもすでに見出している複合体の安定化手法を導入後、細胞への適用を検討する。細胞での計測結果から、蛍光基導入量や、安定化ユニットの導入量を最適化後、in vivoへの検討も行っていくことを予定している。
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