研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は、マイクロ流体デバイスを用いて血管内皮細胞と間葉系幹細胞の共培養を行い、微小培養環境を制御することで、ペリサイトに被覆され安定化された毛細血管の構築を実現することを目的としている。そのなかで、構築された安定化毛細血管の形成過程におけるペリサイトの役割を明らかにすることや、最終的に構築したペリサイトに被覆された毛細血管の三次元的な構造と機能を詳細に検討することに取り組んでいる。具体的には以下の研究成果が得られた。①マイクロ流体デバイスの作製と血管新生モデルの構築: 安定化毛細血管の形成に必要なマイクロ流体デバイスを設計し、作製した。マイクロ流体デバイスは、微細加工を施したシリコンウエハを鋳型としてマイクロ流路パターンを転写したシリコーンゴムにカバーガラスをプラズマ接着することによって作製した。血管内皮細胞はマイクロ流路表面に露出したコラーゲンゲルに接着し、培養液に血管新生因子を添加することで、血管内皮細胞がコラーゲンゲルに侵入し、コラーゲンゲル内部で毛細血管網を形成した。このとき、ゲルの組成についてコラーゲン単独だけでなく、フィブリンおよびコラーゲンとフィブリンの混合についても検討し、血管形成において最適な混合比率を見出した。②血管形成モデルへの間葉系幹細胞の導入(細胞配置の検討): 生体外血管新生モデルを作成する際、間葉系幹細胞を追加するマイクロ流路を変更することで、血管形成の観点から毛細血管網を形成している血管内皮細胞と間葉系幹細胞の相対位置の検討を行った。すなわち、血管内皮細胞と反対側のマイクロ流路に間葉系幹細胞を追加する場合と、同じ側のマイクロ流路にも追加する実験を行った。その結果、後者の条件において、より伸展した安定化毛細血管網が構築されることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の計画は、安定化毛細血管網を形成させる足場となるゲルの検討や、細胞配置の検討が中心的課題であったが、これらの課題が解決され、当初の予定通りに進んでいるため。
平成25年度の研究計画をさらに発展させ、間葉系幹細胞の導入時期を検討し、ペリサイトに被覆された安定化毛細血管網の構築を図る。特に、実験結果における再現性の確認、定量的評価を行うことに加え、最終的に構築された血管網の構造や機能を詳細に調べる。
血管形成の足場となるゲルの組成を最適化する実験が当初の予定よりも効率的に進み、関連する試薬・器具を節約することができたため。今後の研究において間葉系幹細胞と血管内皮細胞の相互作用を実現するメカニズムの検討を追加する予定であり、そのための実験に要する試薬の費用に充当する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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