本研究では、脂肪細胞を取り上げ、プログラマブル培養・計測・制御システムの実現を目指してきた。 本年度は過年度の培養系の課題であった、培養チップの性能の向上を図るとともに、画像取得カメラの機能安定化について種々取り組んだ。具体的にはサンプル数を増やすためにチップ内の培養ウェル数を増やすことに取り組んだ。薬液入出力が可能な流体制御機構の流量制御の精度向上にも取り組んだ。カメラについても焦点調整機能の付与などを行った。 本年度は、培養系に加え、計測、制御機構の研究を強化し、システムを実現した。脂肪細胞の培養については、実現したシステムによる培地交換の自動制御に成功している。実現したシステムにより脂肪細胞の成長評価も可能となり、基本的な機能の実現ができている。本年度は特に、計測結果をもとに制御指令を出す指令系のプログラム設計を重視し、脂肪細胞研究と連動させて研究を推進した。例えば、インシュリン濃度の制御による脂肪細胞の成長状況への影響を評価することが可能となってきており、システムを当初設計通り動作させることに成功している。 脂肪細胞の培養、準備には一定の期間が必要なため、さらに複雑な評価に関しては、さらに時間をかけて研究を進め、多くのデータを蓄積する必要がある状況となっている。本研究期間中に、細胞挙動のばらつきや計測精度への要求仕様、データ処理のポイントなどがわかってきており、萌芽研究の成果として得られた内容をさらに展開していく計画である。引き続き研究分担者と密に内容を検証し、実現したシステムの脂肪細胞研究への応用展開を深めていく予定である。
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