研究課題/領域番号 |
25560214
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
毛利 聡 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00294413)
|
研究分担者 |
橋本 謙 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80341080)
氏原 嘉洋 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80610021)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 心機能 / 心筋分裂 / 心肥大 / 酸素環境 |
研究概要 |
酸素環境は生体の機能発現にとって極めて重要な因子であり、様々な虚血性疾患において組織および血管系のリモデリングによる応答が観察されるが、終末分化細胞である心筋細胞は分裂による組織再生が出来ないため、その細胞周期制御のメカニズムは臨床的にも重要な情報となり得る。本研究では心筋細胞が生後間もなく分裂能を失うことに注目し、同時期に起こる酸素環境の変化が心筋細胞の分裂を停止させるという仮説を検証した。胎児型ヘモグロビンを持つ胎生17日の仔マウスと成体型ヘモグロビンを持つ親マウスの赤血球の酸素親和曲線を比較し、胎児期赤血球の高酸素親和度を確認した。また、出生前後での酸素環境の変化(酸素分圧上昇)が心筋細胞分裂に及ぼす影響を検討するために低酸素(3%)および通常酸素(21%)で心筋細胞を培養するシステムを構築した。胎児心筋(胎生14日、16日、18日)を窒素バブリングした培養液を用いるなどして大気に暴露させずに採取した後、3%酸素で培養し、そのままの酸素分圧下で培養を続けたものと酸素分圧を21%に切りかえた群に分けて96時間後の細胞数を比較した。胎生日数の異なる心筋細胞について同じ条件で検討を行った結果、いずれの胎生日数の心筋細胞も3%酸素下で培養した群では細胞分裂により増加し、20%酸素に切りかえた群では減少した。細胞分裂マーカーであるKi67は20%酸素で低下し、筋節の構造形成は促進していた。これらより、出生時の心筋細胞の分裂停止・分化促進は酸素環境変化がトリガーとなっていることが示された。また、培養系の実験を用いて酸素分圧変化により発現量が変化する遺伝子をマイクロアレイで解析すると共に、胎児マウス心筋と出生後マウス心筋を摘出後直ぐに遺伝子発現の変化を評価して、酸素環境の変化に伴って細胞分裂を停止させる遺伝子の検索を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画では、 胎児心筋細胞と繊維芽細胞の選別法の評価・確立、・ タイムラプス顕微鏡による細胞分裂頻度の評価およびin vivo 組織での低酸素遺伝子応答の検討を行う予定であった。in vivo組織での低酸素応答に関しては現在も進行中であるが、培養系の実験については方法論を確立し、出生時の酸素分圧上昇に伴う心筋細胞分裂停止と遺伝子発現変化についてマイクロアレイを用いた解析を完了することが出来た。また、それらの対象遺伝子をsiRNAを用いて抑制することで、細胞分裂・分化制御にとってより重要な遺伝子をスクリーニングしている。これらの結果より、本研究の進捗状況はおおむね順調であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、昨年度に引き続き in vivo モデルにおける低酸素応答について検討を行い、心筋細胞内Ca2+動態変化の観察、・ 心筋細胞内構造:横行小管系、心筋細胞間構造:介在版の構築評価など具体的な機能成熟を評価する予定である。また、酸素環境の重要な因子としての冠循環形成との関連についても検討していく。
|