研究課題/領域番号 |
25560217
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
巽 英介 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (00216996)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流路調節 / 植込式 / 逆流防止 / 連続流型 / 補助人工心臓 / 安全性 / 離脱試験 / 心機能評価 |
研究概要 |
植込式の連続流型補助人工心臓システムの臨床使用において,2~11%のデバイス不具合が報告されている.この内,体内の血液ポンプを起因とする事例はほぼなく,体外のコンソールやポンプとコンソールを接続しているケーブルを起因とする事例が大半を占めていた.弁を有しない連続流型ポンプによる左心補助時に異常停止した場合,逆流による心臓への致命的な負荷が発生する.この際,開発する流路調節装置により即時に流路が遮断できれば,補助人工心臓システムの一部もしくは全体の交換に要する時間が確保できる.体外部品の不具合であれば,外科的な侵襲を要することなく比較的容易かつ短時間に交換することも可能なため,本装置の有用性は高いと考えられた.また,近年開発された耐久性に優れる連続流型血液ポンプには,低回転数による流量調節が困難なモノがある.この様なポンプから成るシステムに対して,本装置により流路調節をすることで,低流量の調節が可能となり,離脱トレーニングのニーズもあることがわかった. 次に,臨床や基礎研究の場において,血液回路を構成する人工血管グラフトやPVCチューブの流路調節や遮断に用いられている4つの器具を選出し,本邦でも植込式の連続流型補助人工心臓システムの送血管に採用されているePTFE製人工血管用グラフトを対象に,各機構による遮断性能の比較評価のための水実験を行った.チューブクランプ鉗子,ホフマンクランプおよび平面4節リンク機構(板状の部材で流路を挟む機構)は,0.00 L/minまで流量を減らすことができた.ホースタイ(ベルト状の部材で流路外径を絞る機構)は,流入圧200 mmHgに対して0.07 L/min,流入圧150 mmHgに対して0.01 L/minまでしか流量を減らすことができなかった.板状の部材で流路を挟む機構は,人工血管グラフトを遮断して,完全に流れを止めるのに有効であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の1つである調査において,臨床使用時に植込式の連続流型補助人工心臓システムに起因した不具合事例を明らかにすることで,提案する植込式の流路調節装置による流路遮断の有用性が高いことだけでなく,近年開発されている耐久性に優れた小型の連続流型血液ポンプから成るシステムにおいて,流路調節による新たなニーズがあることも判明した.機能評価において,調査に基づき選択した4つの流路を締付ける機構について,連続流型補助人工心臓システムに用いられている送血管用人工血管グラフを対象に,左心補助バイパスの条件で評価を行い,各機構の流路遮断特性を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査および機能評価実験を踏まえつつ,選択した流路調節機構の臨床使用上の問題点についても明らかにする.基礎的な検討に基づき,植込式の流路調節装置に適した流路調節機能とサイズを併せ持ち,モータによる締付け調節制御が可能なプロトタイプの設計・試作に取り組み,進捗が早い場合は部分的に前倒しし,予定外の遅延に備えることで,年度毎の計画目標達成を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,実験に使用する器具等の物品費や謝金の予定額を要することなく,計画を十分に達成し得たため,当該助成金が生じた. 次年度は,さらなる進捗の効率化を目指して,機器の試作および実験に関わる物品や,成果発表のための旅費に費用を充てる予定である.
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