研究課題
人工臓器、歯科用インプラントやステントなどの医療用デバイスは、近年、様々な疾患の治療に用いられている。これらは人工材料で構成されているため、生体に埋入すると異物として認識される。人工材料の移植による異物反応は、ウィルスなどに対するそれとは異なる機構と予想されているが、未だ明らかにされていない。再生医療・組織工学の臨床応用が期待されるなか、細胞移植用足場材料などの人工材料の安全性を的確な評価は急務と言える。そこで本研究では、人工材料の生体内への埋入によって誘起される炎症ならび免疫反応の機序のin vivo評価系における遺伝子レベルでの解明を試みた。平成25年度は、バイオイナートな高分子として人工心臓や人工関節のコーティング剤として用いられているMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマーをコートしたポリエチレン多孔質体(孔径30μm、φ6mm、厚さ2mm)をマウス背部皮下に埋入し、MPCポリマーに肉芽組織形成および血管新生の抑制(バイオイナート性)能がある事を確認し、その内部に浸潤した細胞の遺伝子発現量の数値化まで到達していた。平成26年度は、このデータの解析に加えて、RT-PCRによるM1/M2マクロファージマーカー遺伝子の定量と、PCRアレイによる炎症関連サイトカイン類遺伝子の発現レベルの解析を行った。その結果、MPCポリマーコートによって移植7日後ではM1マクロファージ(炎症性)の遊走と炎症系サイトカイン類の遺伝子の発現が抑制された。しかし、移植28日後では、MPCポリマーコート多孔質体で弱い炎症反応を示唆する遺伝子発現変化が見られた。これらの結果から、MPCポリマーコートによって多孔質体に対する初期炎症反応が強く抑制される一方で、長期間埋入時の弱い炎症の惹起、すなわちMPCコートによる炎症反応の遅延効果を明らかとした。
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Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition
巻: 25 ページ: 1658-1672
10.1080/09205063.2014.939917