研究課題/領域番号 |
25560222
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秋山 佳丈 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80585878)
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研究分担者 |
森島 圭祐 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60359114)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞凍結保存 / インクジェット |
研究概要 |
細胞の凍結保存法は細胞株の長期間維持および輸送において必須の技術であり,iPS細胞やES細胞の樹立によりその重要性はさらに増している.具体的な凍結手法としては,緩慢凍結法およびガラス化凍結法が挙げられるが,どちらも氷晶(氷の粒)の生成を抑制するために添加する凍結保護剤の毒性や生成した氷による細胞の破壊などにより,解凍後の生存率は十分ではない.そこで,細胞を1ナノリットルの液滴としてインクジェットヘッドより吐出し冷却することで,瞬間凍結行う.それにより,凍結保護剤を用いずかつ氷の生成を抑えた全く新しい細胞凍結保存法の創出を目指す. インクジェットを用いて細胞を約1 nLの液滴に内包し,液体窒素で冷却した基板上に吐出することで瞬間凍結した.その後,37度の培地に浸漬することで,急速に融解を行い,細胞の生存率を評価した.本手法において,凍結融解した細胞の生存率は約15 %であった.単純に凍結保護剤を用いずに緩慢凍結および融解した場合,ほとんどの細胞は死滅し,その生存率は約2 %であったの対して,生存率が大幅に向上しており,瞬間凍結による凍結保存の可能性を見出せた.しかし,従来の凍結保護剤を用いて凍結保存した場合の細胞生存率は70 %を越えることから,さらなる生存率向上が望まれる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞を瞬間凍結するための装置の開発を終え,細胞凍結実験を行っただけでなく,来年度の予定であった細胞の生存率を定量的に評価することができた.一方で,電子顕微鏡を用いた細胞内氷晶の観察および評価は,達成できなかった.これらの点を踏まえて,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度達成できなかった透過型電子顕微鏡による氷晶サイズの評価に取り組みたい.これに必要な透過型電子顕微鏡およびサンプル調整のための機器の利用の支援していただける機関を模索中である.また,現在の本手法による細胞生存率は15 %程度と低く,十分でない.そこで,液滴サイズをさらに小さくすることで凍結速度の向上や,凍結保護効果のある培地成分(血清や糖など)の濃度を向上させることで,生存率の向上を目指したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
電子顕微鏡による観察を目的とした施設利用費を計上していたが,打ち合わせ段階で止まっており,実際に施設利用費を払うに至らなかった. 今年度も引き続き,電子顕微鏡の利用を予定しており,その施設利用費に充当する.
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