研究課題
腫瘍化に伴う遺伝子レベル、あるいは分子レベルでの変化が解き明かされることによって新しい治療戦略が開発されてきた。特にがん遺伝子産物に関する知見や細胞内シグナル、血管新生、そして転移機構などに関する近年の著しい進展は、従来にないコンセプトに基づく化学的あるいは生物学的に治療法を可能にしている。しかしながら、これら新規薬物の治療効果を最大限に引き出すためには、同時に病変部位への薬物輸送システム(ドラッグデリバリーシステム, DDS)の開発が必要不可欠である。標的細胞への的確な薬物輸送は、副作用の低減と投与量の減少を通じてこれまでの薬物治療に大きな改善をもたらすであろう。本研究ではタンパク質ベースのナノDDSキャリアの設計と発現を行った。このタンパク質は自己組織化により24量体となり、直径約12nmの球状構造体を構成する。本年度はナノカプセルの外郭にヒト膵癌細胞への高い親和性が報告されているiRGDペプチドを組み込んだ。さらにiRGDドメインとナノカプセル本体をつなぐリンカーとして(GSG)n (n=1~10)からなるフレキシブルリンカーを導入した。動的光散乱法(DLS)によって評価したところ、このSP94修飾ナノカプセルは12~14nmのナノ構造体であった。さらにそれらの細胞特異性を評価した結果、期待通り、ヒト膵癌細胞特異的に形質転換されることがわかった。このナノカプセルはNeuropilin-1高発現の膵癌細胞株(たとえばAsPC-1)に対して、iRGD依存的に親和性を示した。またナノカプセルには内孔に薬物OSU03012を内包させることが可能であり、ヒト膵癌細胞株AsPC-1に対してフリーOSU03012よりも低いIC50値を示した。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
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