【目的】ブレイン-マシン・インタフェースを真に実現するための基盤技術として神経電極の重要性が注目されているが、従来の微小神経電極はシリコンをベースとした固い構造のものであった。これはその電気的特性や作成面での利点がある一方、機械的侵襲に特に弱い性質を持つ神経細胞を痛めるだけでなく、装着した神経組織の柔軟な動きに追従できずに、「ずれる」(目的とする神経線維と長期間の安定した接続ができない)原因にもなっている。そこで本研究では、装着後に神経細胞との接続を長期間維持できるような神経電極構造および装着方法の開発を目的とする。より具体的には柔軟神経電極の表面の微小突起構造が神経細胞に取り込まれる工夫などによる長期安定計測の実現を目指す。 【実績】 ■計画1-1:柔軟な基板を有する神経電極の準備。パリレンC(ポリクロロパラキシリレン)を基板材料とした柔軟神経電極について、本課題の遂行のための改良・試作を行った。皮質内への刺入型電極と、脳表面用電極とを兼用可能な構造の電極を昨年度に引き続き作成するとともに、プローブ外形、各電極サイズ等の点で改良を実施した。 ■計画1-2:評価系の準備。対象としてラット大脳皮質を利用できるよう評価系を構築した。慢性埋込みを実現するため、脱落を防ぐようなチャンバ形状の工夫など、系の改良を実施した。 ■計画2:神経細胞との接続を長期間維持できるような電極構造の確立。 電極表面のミクロな構造を工夫することによって、神経細胞との接続を長期にわたって安定に維持することを目指した構造を作成した。フォトレジストによるマスクと金めっきを利用した簡易な方法で突起構造を実現した。数種類の構造を作成して電気的特性を測定・評価するとともに、ラットでの評価を実施し、突起構造の保護を含む、刺入装着方法を開発した。
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