本研究では,細胞膜張力が生体に近い状態で細胞培養が可能な微小培養容器を開発し,実際にソノポレーション実験を行うことにより容器の有用性を確認することを目的とする. ◎光ピンセットの気泡捕捉能の改善 補足ビームの形状をラゲールガウシアン型からベッセル型に変更することにより水平方向への気泡補足力を約2倍に向上した.しかし,容器内での細胞伸展能を確保するために後述する表面の親和性を向上する処理を行ったところ,光ピンセットによる細胞と気泡の制御能が低下した.この点については今後の課題に残された. ◎マイクロ流路作製プロセスの立ち上げ フォトリソグラフィ技術を用いてマイクロ流路作製プロセスを立ち上げた.プロセスを利用して厚膜フォトマスクSU-8により微小培養容器を作成した.科研費購入したスピンコーターとナノテクプラットフォームで借用した露光装置を使用し,露光用マスクは外注で作製した. ◎微小容器の作製 深さ約40ミクロンで直径が20~2000ミクロンの範囲で変化する微小容器と,一定径(100ミクロン)の微小容器を作成した.当初の容器では10数時間の培養液浸漬により剥離が生じたため,微小容器の表面にパリレンコーティング,フィブロネクチンコーティングを行い,細胞親和性が高く1週間程度の細胞培養に耐えうる微小容器を実現した.径が一定の容器中に入る細胞数が異なる条件で細胞培養を行い,細胞数と細胞の伸展面積が相関することを確認した. ◎培養容器内でのソノポレーションの実現 容器内に培養した細胞に対してソノポレーションを行い,細胞膜に生じる損傷と修復の過程を蛍光顕微鏡により観察することに成功した.細胞の伸展面積や近接した壁の存在がソノポレーション効果に影響を与える傾向が見られたことから,開発した微小容器がソノポレーションの基礎研究に有用であることが確認できた.
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