研究課題/領域番号 |
25560236
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 健悟 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定助教 (50649233)
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研究分担者 |
山川 誠 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 特定准教授 (60344876)
椎名 毅 京都大学, 医学研究科, 教授 (40192603)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超音波イメージング / パルス符号化 / 高速撮像 |
研究概要 |
従来の超音波断層像の計測では秒間数10枚から100枚程度が撮像の限界であったが、近年の計算機の能力向上および信号処理法の開発により、秒間数100枚から数千枚の画像取得が可能となった。一方で、このような高速撮像では送信時にはビーム形成を行わず、受信後の後処理によってのみ画像形成を行うため、従来の超音波像と比較して分解能やコントラストで劣る。画質向上のためにはフレームレートを落とす必要があり、画質とフレームレートがトレードオフという関係がある。本研究では、超音波断層像の高速撮像において、フレームレートの低下を抑えながら空間分解能およびコントラストを向上させる手法の開発を目的とする。 平成25年度は、高いフレームレートと空間分解能を両立するための方法として、超音波パルス符号化を用いた複数の超音波信号の同時計測法のアルゴリズムを提案し、数値シミュレーションを用いて検討した。符号化パルスを用いた同時送信信号の分離法として、まず、これまで超音波計測において用いられてきたM系列符号化、Gold符号化等を用いて、複数の素子からそれぞれ異なる符号列を用いて送信し、相関を用いた通常の復号化法による復号化について検討したところ、信号同士の混信が大きく、非常に長い符号長の符号列を用いたとしても超音波診断に必要なSNRが得られないことがわかった。そこで、新たな復号化法として、最適化問題を解くことによって、より復号化エラーの少ない非線形復号化法を開発した。提案法によって、単一の符号列の場合は従来の相関を用いた復号化法よりも符号化によるレンジサイドローブが少なくなることが示唆された。続いて、複数信号の同時計測への応用について現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同時送信した符号化パルスを分離するために用いる符号化・復号化法について、当初想定していた方法では、非常に長い符号長を用いたとしても画像化に必要な性能が得られないことがわかった。そのため、符号化パルスの新たな復号化法の開発を行うこととなったため、アルゴリズムの開発および検証に時間がかかり、当初想定していたスケジュールよりも遅れることとなった。しかし、開発した復号化法について、復号化によるエラーが従来法と比べて少ないことが、まず単一符号列の復号化において示唆されたため、複数信号の同時計測において複数の符号列について同様に適用することで複数信号の分離に有用であることが期待でき、今後の見通しはある程度得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究により、最適化問題を解くことにより、復号化によるエラーの少ない符号化パルスが得られることが示唆された。今後は、詳細な検討により、提案手法の有効性を検証し、さらに複数信号の分離のためのアルゴリズムに発展させ、数値シミュレーションにより検討する。シミュレーションによって有効性が確認された後は、実際の超音波送受信システムを用いた検証をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度には、研究成果投稿料および外国語論文の校閲費用として予算を計上していたが、本年度は論文投稿を行わなかったため残額が生じた。また、次年度にはファントム実験による提案手法の検証を計画しているが、実験では予期せぬ支出が生じる可能性があるため、翌年度に繰り越すこととした。 次年度は、提案手法のファントム実験による検証を計画している。超音波プローブおよび超音波ファントム、基礎実験システム製作用部品等の購入費として使用する。また、研究成果の学会発表のための旅費および研究成果投稿料として使用する。
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