日本社会の高年齢化に伴い、がんによる死者数は増加の一途を辿っている。そのため、治療可能ながんを簡便かつ非侵襲的に、より早期に発見できる診断法の開発が求められている。そこで、我々は、超臨界流体クロマトグラフィーに質量分析計を接続した新しい分析手法を構築し、がんバイオマーカー分析のための血清中代謝物分析システムの確立を試みた。平成25年度において、超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析計を用いた酸化カルテノイド類、酸化リン脂質などの酸化脂質(エポキシ体、ケト体、ヒドロキシ体、ヒドロペルオキシ体、ジエポキシ体、ジケト体、ジヒドロキシ体、ジヒドロペルオキシ体)の分析系を構築したが、平成26年度には、超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析計において、平成25年度に使用していたものとは別の分析カラムを用いることで、脂質だけでなく、陽イオン性代謝物や陰イオン性代謝物などの親水性代謝物も分析できるようになり、より網羅的に血清中代謝物を分析できるようになった。また、液体クロマトグラフ質量分析計を用いた大腸がん患者血清検体、ならびに、健常者血清検体の分析を行い、大腸がん患者血清と健常者血清との間で有意に変動する代謝物を見出し、その代謝物を超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析計において分析できる条件の検証を行った。大腸がん患者血清と健常者血清との間で有意に変動する代謝物、すなわち、超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析計分析対象代謝物候補は、34種類存在したが、34種類すべての代謝物を一斉に、かつ、安定的に分析できる条件を決定することはできなかった。しかし、複数の代謝物候補を分析できる系を構築できた。
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