研究課題/領域番号 |
25560243
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤江 正克 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339716)
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研究分担者 |
小林 洋 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50424817)
川村 和也 千葉大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50449336)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 手術支援ロボット / 医療ロボティクス / マスタ・スレーブ / 脳活動 / 道具の身体化 |
研究概要 |
本研究の目的はマスタ・スレーブ型手術支援ロボットの機構と操作者の脳活動の関係性を導出し,直感的に操作可能な手術支援ロボットの構造を設計することである.初年度は研究実施計画に沿って,手術支援ロボットと脳活動の関係性を導出した.手術支援ロボットの直感的な操作にはhand-eye coordinationが求められる.hand-eye coordinationを高めるため,内視鏡とスレーブの最適な位置関係を脳活動から導出した. 実験構成として仮想空間内にてロボットアームとターゲットとなるボックスを描画し,ロボットアームの先端とハンドコントローラの先端を同期させて操作可能なシステムを構築した.仮想アームを操作している際の被験者の脳活動を光トポグラフィ(f-NIRS)を用いて計測した.実験条件として内視鏡の位置を固定し,スレーブの位置を変化させて操作を行った. 実験の結果,特定のスレーブ位置で操作した際に脳の特定部位が有意に活動することがわかった.有意に脳活動が反応する際のロボットの構造は人間の身体の構造と近く,手首が捻りやすい或いは操作時のイメージと合致しやすい構造であることがわかった. 今回の実験結果から,操作時の脳活動はロボットを操作者自身の身体の一部として知覚して操作している「道具の身体化」という現象に深く関与しており,「身体像」という自身の身体のイメージに影響しやすい構造ほど直感的に操作できる可能性があると結論づけた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の初年度に記載されている「手術支援ロボットと脳活動の関係性の導出」に関して実施できたため,研究は概ね順調に進展している.研究成果として「道具の身体化」という認知科学分野の知見とロボット工学との新たな進展を期待できるセレンディピティも発見できたため,研究成果の収穫は十分である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度にて実施した実験成果から,脳活動と手術支援ロボットの構造の関係性を導出したが,脳活動は気分や体調等によって変化する不規則なものであるため,統計的手法や解析手法を新たに提案する必要がある. 具体的な提案手法としてカオス解析による決定論的な解析手法か,或いは確率的な解析手法による解析を検討している.脳活動による反応は種類によって両者どちらの手法も用いられることは多いが,本研究ではロボットの操作という応用的な実験系における解析を目指しているため,カオス解析のような決定論的な解析手法よりも,確率的な解析手法の方が適切であると考えている.実験を通してこれらの仮説が適切であるか検証する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は仮想空間内でロボットを操作している際の脳活動を計測するという実験内容であった.実験構成としては仮想空間にロボットを描画したシミュレータを使用し,脳活動計測装置は先端生命医科学センターの共用機器を使用して実験を実施した.そのため,初年度は新たに購入する機器類が少なく済んだため使用額は少なくて済んだ. 次年度は初年度にて導出した設計案が臨床的観点から適用可能であるかを検証するため,設計案に従って手術支援ロボットを構築する必要がある.そのため,次年度使用額が生じた. 次年度は初年度にて導出した手術支援ロボットの設計案を基に構築し,臨床的観点から手術支援ロボットを直感的に使用可能であるかを検証する.手術支援ロボットの開発はこれまで共同研究を続けてきた製作所に設計案を依頼し開発する予定である.臨床的評価は共同研究先である九州大学病院と連携して実施する予定である.
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