研究課題/領域番号 |
25560247
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
中岡 竜介 国立医薬品食品衛生研究所, 医療機器部, 室長 (20291114)
|
研究分担者 |
植松 美幸 国立医薬品食品衛生研究所, 医療機器部, 主任研究官 (10424813)
梅津 光生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90132927)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 生体外シミュレーション / 病態モデル / 大動脈瘤 / ステントグラフト |
研究概要 |
弓部大動脈瘤を対象とする開窓型ステントグラフトが開発され,2012年12月に国内で薬事承認が得られた.本研究ではこのステントグラフトを対象にデバイスを生体外で評価可能となる項目について検討を始めた. 開窓型ステントグラフトは開窓位置を分枝血管に一致させることが重要であるが,ステントグラフトはシースに内挿して患者の下肢血管から標的血管内に運ぶため,ねじれを有する大動脈血管内でシースがどのような経路を通るか把握することが安全な使用につながると考えられる.そこで,ステントグラフトの留置位置に影響を及ぼすシースの走行に着目し,大動脈瘤ファントムを製作して検討することを目的とした. ヒト大動脈の文献値に合わせた弾性率1.9 MPaのシリコーン製大動脈瘤ファントムを患者1症例のDICOMデータを基に製作した.この弾性大動脈瘤ファントムに対してシースを挿入していき,シース先端位置を一点に設定した際のシース走行形状を磁気式位置計測器で計測した.本実験で計測したシース走行形状をCT画像から三次元構築したモデル画像上に重畳表示した(n=18).その結果,シース走行はすべて大弯側に沿った形状になった.また,シース先端から分枝血管までの距離となる60 mmの点とその中間の30 mmの点において,計測器座標系でのシース走行のばらつきを定量化した結果,シース先端から30 mmでは最大6.3 mm,先端から60 mmでは最大7.9 mm平均位置との距離があった.また,血管周方向の角度でばらつきを定量化した結果,シース先端から30 mmでは+15.3度から-12.6度,60 mmでは+18.8度から-17.3度の角度のばらつきとなった.本研究でのシース走行の計測および検討から,シース走行を術前に予測可能であることが示唆され,ステントグラフトの適切な留置につながる基礎データが取得できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動脈壁の弾性率を文献値により得ることができた.また,ステントグラフト挿入の様子を可視化させるために,透明なシリコーンを用いたファントムを作製することにした.ここで,シリコーンでのファントム作製の上で妥当である弾性率を求めるために,シリコーンとオイルの比率を変えたダンベル試験片を作製し,ヤング率計測を行った. ヒトの弓部大動脈瘤でよく見られるパターンのひとつである形状について,シリコーンファントムを作製した.これを対象にステントグラフトをシースでデリバリーすることで,シース挿入からステントグラフト留置までを画像のみでなく,目で見て確認できるようにできた.
|
今後の研究の推進方策 |
弓部大動脈瘤のファントムへの開窓部への一致についてはCT画像の撮影などによって確認する.また,血流のある状態を模擬するために拍動流回路を作製する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
血管ファントムの内壁の摩擦抵抗を抑えるための工夫をするために予算を準備していたが,まずは界面活性剤を塗布することで対処することにした. 拍動流存在下でシリコーンファントム作製に用いる.H25年度からの改善事項として透明度の向上と厚さを均一にするための工夫などに利用する.
|