研究実績の概要 |
発作性心房細動患者においては、心房細動発作が運動で誘発される症例とそうでない症例がある。心房細動発作が運動で誘発されるかどうかについて各種生理検査にて検討されているが、今までのところ安静時での判別は確立していない。安静時あるいは軽度の負荷で運動による心房細動発作の誘発の可能性が判別できれば、運動制限を必要としない患者に対して過度の運動制限を行わずに済み、日常生活の活動性の向上、ひいては健康増進につながる可能性がある。 発作性心房細動治療目的の入院患者に対して心肺運動負荷試験を行い、そのときの心拍変動を評価する。研究期間である3年間での、負荷時に洞性整脈であった症例は114例、その中で運動負荷試験中に心房細動発作をおこしたものは5例であった。 運動負荷試験中の心房細動発作の有無にかかわらず、これまでの114例の平均の最高酸素摂取量、嫌気性代謝閾値は健康な日本人の基準値(Itoh H, et al. J Cardiol. 2013;61:71-78.)に比べ低めであり、回帰直線を上回る症例はわずかに8例であった。抗不整脈薬による陰性変力作用の影響も否定できないが、心房細動発作への不安感が運動制限につながっている可能性も否定できない。検査時ほどの運動をしたのは久しぶりという感想がたびたび聞かれた。 心房細動発作をおこした5例のうち4例は、いずれも負荷量が嫌気性代謝閾値を大きく超えてから心房細動発作をおこしており、負荷終了後に自然停止が得られている。1例は低負荷から心房細動となっても、そのまま継続することで洞性整脈と心房細動とを繰り返した。運動で誘発されたとは限らない奨励である。薬物的あるいは電気的な除細動必要としなかった。 現在周波数領域解析による運動時の心拍変動の解析中である。
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