研究課題/領域番号 |
25560254
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河上 敬介 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60195047)
|
研究分担者 |
笹井 宣昌 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (20454762)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 廃用性筋萎縮 / 培養細胞 / 筋萎縮モデル / マウス / 理学療法 |
研究概要 |
廃用性筋萎縮に効果的な理学療法を解明するには、培養細胞を用いた廃用性筋萎縮モデルが不可欠である。薬物投与による培養筋萎縮モデルの報告はあるが、シグナルの一部を止めただけのモデルである。複数の蛋白質分解・合成機構が絡む廃用性筋萎縮のモデルとして不適格である。そこで本研究の目的は、臨床を模擬し、運動の脱負荷による培養筋萎縮モデルを作製することである。また、本モデルが、ヒトや動物で起こる “真”の廃用性筋萎縮モデルとして適格かどうかを検証する。 平成25年度は、電気刺激下で2日間培養した筋管細胞を、電気刺激停止により脱負荷状態に切り替えて2日間培養し、筋管細胞横径の変化を検証した。対象は、トリ胸筋から作製した初代筋管細胞(トリ筋管細胞)およびマウスの筋サテライト細胞から作成した初代筋管細胞(マウス筋管細胞)を用いた。その結果、電気刺激を与えないで培養するよりも電気刺激を与えた状態で培養した方の筋管細胞横径が太いこと、電気刺激停止2日後には有意な筋管細胞横径の減少が起こることを両細胞において確認できた。 ただ、トリ筋管細胞とマウス筋管細胞に同一強度の電気刺激を与えたところ、マウス筋管細胞では基質から剥離した。よって、マウス筋管細胞ではトリ筋管細胞よりも弱い刺激下での培養しかできなかった。これが理由で、電気刺激による非刺激群に比べたマウス筋管細胞横径の増加および減少の変化率は10%であり、トリ筋管細胞における変化率(30%)に比べて小さかった。この根本的な原因には、マウス筋管細胞作製時のみに用いる細胞外基質(マトリゲル)の強度、電気刺激の頻度等が原因である可能性と考えられた。今後の生化学的実験のためにも、より変化率の大きなマウス筋管細胞によるモデルの作製が必要であり、今後の検討課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の大きな目標であった、薬物等の投与をしないで筋線維の横径が減少する培養系の筋萎縮モデルが完成したことにつきる。次年度の結果も含めて精査する必要はあるものの、本モデルにより、これまで実験動物ではできなかった科学的検証の道が開かれたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今回作製できたモデルで、生体内で起こる生化学的現象と同様の現象が起こるかどうかを調べる。具体的には、ユビキチン-プロテアソーム系とオートファジー系との両蛋白質分解経路の活性化や、蛋白質合成経路の不活性化が本モデルにおいても生体と同様に働いているか、それが必須のものかを検証する。 培養細胞に電気刺激を2日間与えた後刺激を止め、経時的に筋管細胞の組織サンプルと筋蛋白質サンプルを採取する。ユビキチン-プロテアソーム系の蛋白質分解機構の検証は以下の手順で行う。①ユビキチンリガーゼE1阻害剤を培地に添加して、本モデルの筋管細胞の横径の減少を抑制の有無を検証する。②プロテアソーム阻害剤を培地に添加して、プロテアソームで認識されるK48ポリユビキチン鎖によって修飾された蛋白質の増加を検証する。③IRS-1などの筋肥大シグナルに関わる蛋白質が、電気刺激を中断した本モデルにおいてもユビキチンによって修飾されているか、すなわち実際の廃用性筋萎縮と同じメカニズムで筋の横径が減少しているかを、共免疫沈降法により確認する。 オートファジー系の蛋白質分解機構の検証は以下の手順で行う。①電子顕微鏡によりオートファゴソーム及びオートリソソーム像を確認する。②LC3の活性をウエスタンブロット法により確認する。③培養開始5日目から電気刺激を2日間与えた後電気刺激を止め、オートファジーの阻害剤を添加した培地で培養する。本モデルでの筋管細胞の横径減少に、オートファジー系分解機構が必須であるかどうか確認する。 以上の実験には時間を有する者もあるため、可能なところから初めて、一部は平成27年度に回す予定である。蛋白質の合成に関しては、Akt、mTOR等の活性を調べる。 また、並行して、昨年度の積み残しである「より変化率の大きなマウス筋管細胞によるモデル」の作製条件を検証し、可能なところからマウス筋管細胞モデルに移行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
直接経費に次年度使用額が生じたのは、マウス筋管細胞に比べてトリ筋管細胞を用いた筋萎縮モデルの作製に関わる実験を中心に進めたためである。そのために、マウス筋管細胞を作成のために必要な実験動物の購入が予定に比べて少なかったからである。 繰越金は、マウス筋管細胞を用いた筋萎縮モデルを作製しそれも用いた実験へ展開するために、実験動物の購入に使用する。具体的には、8週令マウス(@2千円)×30匹、計60千円
|