研究課題/領域番号 |
25560256
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市橋 則明 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50203104)
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研究分担者 |
池添 冬芽 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10263146)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高齢者 / トレーニング / 歩行 / 筋力 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究目的は1)高齢者における骨格筋の質の変化が運動機能や動作能力に及ぼす影響について明らかにすること、2)高齢者を対象に運動速度をゆっくりとするスロートレーニングと運動速度を素早くするパワートレーニングを実施し、どちらのトレーニング法が高齢者の運動機能や歩行能力の改善に有効であるかを検証することとした。 研究1)対象は健常高齢女性34名とした。大腿四頭筋を対象筋として、超音波診断装置を用いて筋輝度(筋内非収縮組織の割合)、筋硬度計を用いて筋硬度を測定した。運動機能として等尺性膝伸展筋力、動作能力として5回立ち座りテストを評価した。相関分析の結果、筋力は筋輝度と有意な相関を認め、筋内非収縮組織の割合が増加するほど、筋力は低下することが示された。また立ち座りテストは筋収縮時筋硬度および筋輝度と有意な相関を認め、収縮時筋硬度が減少・筋内非収縮組織の割合が増加するほど、立ち座り能力は低下することが示された。本研究の結果、高齢者における大腿四頭筋の質の変化は筋力や立ち座り能力に影響を及ぼすことが示唆された。 研究2)対象は健常高齢者32名とした。スロートレーニングを実施するスロー群、パワートレーニングを実施するパワー群に分類し、両群とも週1回8週間の下肢筋力トレーニングを実施した。運動機能として膝伸展筋力、歩行能力として最大努力歩行時の速度、ケーデンス、ストライド長、立脚期時間の左右非対称性、歩行周期変動性を評価した。介入後、膝伸展筋力は両群ともに有意な増加がみられ、両群の筋力増加率に有意差はみられなかった。歩行能力はスロー群の立脚期左右非対称性と歩行周期変動性のみ有意に減少した。本研究の結果、スロートレーニングとパワートレーニングはともに筋力の改善に有効であり、加えてスロートレーニングは歩行特性の改善にも有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は高齢者の筋の質の変化と運動機能・動作能力との関連について明らかにすること、運動速度を変化させた筋力トレーニングが高齢者の運動機能や歩行能力へ及ぼす効果について明らかにすることを目的として研究を実施した。本研究の結果、筋内非収縮組織の増加や収縮時筋硬度減少といった筋の質の変化は高齢者の筋力や立ち座り能力に影響を及ぼすこと、運動速度を変化させた筋力トレーニング(スロートレーニングとパワートレーニング)はいずれも筋力の改善に有効であることが示唆された。しかしながら、運動速度を変化させた筋力トレーニングが筋力以外の運動機能や生活活動量等に及ぼす影響については、さらなる検証が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は運動速度を変化させた筋力トレーニングを実施する群と、トレーニング介入を行わないコントロール群を設定し、高齢者の筋力・バランス能力・柔軟性・敏捷性といった運動機能や、生活空間・1日の歩数や歩行時間といった生活活動量等へ及ぼす効果について多面的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究においては、運動速度を変化させた筋力トレーニングが高齢者の筋力や歩行能力へ及ぼす効果について検証した。このようにスロートレーニングとパワートレーニングはいずれも筋力改善に有効であることが明らかとなったが、筋力以外の運動機能や生活活動量など、多面的な要因に関する検討が不十分であった。さらに、当初予定していた人数よりも対象者数も少なく、トレーニング介入を行わないコントロール群の設定もできていなかった。この2点が次年度の使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施できなかった運動速度を変化させた筋力トレーニングの有効性の検証について、多面的な運動機能・生活活動要因を含めて、トレーニング介入を行わないコントロール群を設定したうえで研究を行う予定である。
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