研究課題
本研究は運動速度をゆっくりとするスロートレーニングと運動速度を素早くするパワートレーニングのどちらの筋力トレーニング法が高齢者の運動機能や生活活動量、精神心理機能の改善に効果的であるかを多面的に検討した。対象は地域在住高齢者51名(年齢77.9±5.6歳)とし、スロートレーニングを実施するスロー群、パワートレーニングを実施するパワー群、トレーニングを実施しない対照群の3群に分類した。スロー群およびパワー群には週1回8週間の筋力トレーニングを実施した。スロートレーニングでは求心性・遠心性フェーズともに5秒かけて運動を行った。パワートレーニングでは求心性フェーズはできるだけ速く動かし、遠心性フェーズでは2秒かけて運動を行った。運動機能として筋力、バランス、柔軟性、敏捷性を評価した。また、Life Space-Assessment(LSA)により生活空間を評価した。歩行量として3軸加速度センサーを用いて1日あたりの平均歩数と歩行時間を求めた。精神心理機能として、Geriatric Depression Scale-15(GDS-15)により抑うつ状態、転倒に対する自己効力感スケール(Fall Efficacy Scale;FES)により転倒恐怖感の程度を評価した。8週間の介入後、膝伸展筋力は対照群では変化がみられなかったが、スロー群とパワー群では介入後に有意な増加がみられ、両群の筋力増加率に有意差はみられなかった。膝伸展筋力以外の運動機能はいずれの群も変化がみられなかった。生活空間や歩行量、抑うつ状態や転倒恐怖感は3群いずれも変化がみられなかった。これらのことから、スロートレーニングとパワートレーニングはともに筋力の改善に有効であるが、筋力以外の運動機能や生活空間、歩行量、精神心理機能に及ぼす効果は不十分であることが示唆された。
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