研究課題
挑戦的萌芽研究
変形性関節症(OA)に対するリハビリテーションにおいて、関節軟骨の軟骨細胞を標的とする低出力超音波パルス刺激療法(LIPUS)はまだ行われていない。そこでLIPUSが軟骨細胞に及ぼす影響について、細胞外基質のコラーゲンを破壊に向かわせるMMP13(マトリックスメタロプロテアーゼ13)について調べた。またメタロプロテアーゼ阻害蛋白であるTIMP1とTIMP2についても調べた。12週齢のラット膝関節から軟骨細胞を採取し培養後、OAの擬似病態を惹起させるために炎症性サイトカインであるIL-1βを、OA患者の膝関節液中と同程度の濃度である100 pg/ml加える群と加えない群を作り、添加直後からLIPUS刺激を20分間行った。刺激後、1時間もしくは3時間後にmRNA発現解析をリアルタイムPCRにて解析した。その結果、LIPUS刺激後1時間では,MMP13 mRNAはIL-1βによって有意に発現が上昇したが、LIPUS刺激によってその発現上昇は有意に軽減された。しかし、3時間後においてはその統計学的な有意差は認められなくなった。これはIL-1βによって惹起されたMMP13 mRNAは0.15 W/cm2強度のLIPUSによって抑制され得るが、その持続性は短く、3時間後には抑制効果は減弱することを示唆している。続いてLIPUS強度の違いが与える影響について検討した。LIPUS刺激強度は、0、0.0375、0.15、0.6 W/cm2という4群を設けた。その結果 LIPUSは強度依存性にMMP13の発現上昇を抑制した。以上より、LIPUSはIL-1βによって惹起されたMMP13 mRNAの発現を強度依存性に即時的に抑制することが示唆された。TIMP1および2については影響がなかった。これらはLIPUSが軟骨破壊因子を抑制することでOA進行を防止する可能性があることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
おおむね予定通りに研究が進捗している。機器故障等のトラブルがなかったこと、および、実施可能な範囲の研究計画が立案されていたこと等が理由としてあげられる。
本研究課題の今後の推進方策について、最近注目されている軟骨細胞移植、骨髄由来間葉系幹細胞移植、骨髄由来間葉系間質細胞移植、iPS細胞から誘導した軟骨細胞移植後の超音波治療の影響を検討する必要が生じている。
予定していた当初計画よりも旅費支出が少なかったため¥37,844の次年度使用額が生じた。この次年度使用額¥37,844と、翌年分として請求した¥1,700,000を合わせた合計¥1,737,844は、物品費¥1,437,844、旅費¥200,000、人件費・謝金¥0、その他¥50,000、計¥1,437,844として使用する計画である。
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