研究課題
挑戦的萌芽研究
人工感覚システム(人工網膜)の実用化のためには、連続する電気刺激によって生じる生体の反応の低下、いわゆる順応現象を克服する必要がある。本年度は網膜のSTS型刺激による視覚野の反応の順応を神経生理学的手法を用いて評価することを試みた。単一ニューロン記録の場合は、長時間同じユニット活動を多点で記録することが困難であり、頻回刺激の前後を比較して定量的評価を行うことが難しいと考えられた。そのため、皮質電図を評価手段として用いることにし、麻酔非動化したネコにおいて、硬膜を除去した大豊皮質の視覚野上に、4×4の皮質電図記録用電極を設置した。そして眼球側には4極の電気刺激用の電極を設置した。眼球側の各電極をそれぞれ個別に8秒毎に電気刺激し、それによる誘発反応を皮質上の各電極の平均加算によって求め、マッピングを行った。その中で一番大きな反応が得られる皮質電極に関して、網膜からの頻回刺激を与える前後でその大きさを比較した。誘発反応の中で潜時が一番早い波は11-15ミリ秒の潜時を持っており、その大きさを調べたところ、4点のどの網膜電極においても、頻回刺激を与えた後はその前に比べて誘発反応が低下することが確認された。さらに、頻回刺激後には、誘発反応記録用の電気刺激を低頻度に受けているにもかかわらず、時間が経つと誘発反応が回復し大きくなる傾向にあることもわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では網膜の刺激を1点のみで行う予定であったが、刺激電極間での比較検討を行うために、後年で実施する予定の網膜における複数点の刺激を先行して実施できた。一方、刺激パラメータの検討については遅れがあるが、総合して概ね順調に進展している。
計画通り推進する予定である。
初年度につき、記録用の電極の設計・作成に予想以上の時間を要し、実験動物の使用数が見込みよりも少なかったため平成26年度は作成した記録電極を用いて、記録実験の回数が増加するため、次年度使用額分を実験動物関連の費用に割り当てて使用する計画である。
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Automation, Control and Intelligent Systems
巻: 1 ページ: 121-130
10.11648/j.acis.20130106.11
Frontiers in System Neuroscience
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10.3389/fnsys.2013.00103