昨年までの結果に基づき、眼球の強膜上に設置した人工網膜電極からの刺激によって生じる反応を効率的に記録するために、記録のためにこれまで使用していた4×4の16極の皮質電極を分割し、それぞれ2×4個の電極を持つ2枚皮質電極を作成した。麻酔非動化したネコの半球間裂と皮質上面にこの記録電極を設置し光刺激に対する反応から各皮質電極直下の網膜部位対応を調べた。さらに、強膜上の刺激電極の位置をOCTで同定し、網膜血管パターンを手がかりとして、皮質電極の対応部位と重ね合わせた上で、対応部位に着目して電気刺激を行った。網膜電極は強膜上の血管の走行に制限を受けるため、鼻側網膜と耳側網膜の両方にまたがって、しかも中心野からは離れて設置されるため、片側大脳半球からは一部の網膜電極からの入力を受ける。また、半球間裂の皮質電極からは深部の17野の反応が、そして18野の反応が記録された。また、視覚と異なるモダリティとして、体性感覚の入力を受ける3野を選び、刺激用のステンレス製双極電極を設置した。このセッティングの下で、網膜電極を電気刺激し、20Hzおよび10Hzの順応頻回刺激と同時に3野へも同じタイミング頻回刺激を加えて、皮質脳波に与える影響を調べた。その結果、大脳皮質への電気刺激が人工網膜による順応に対して影響を与えると認めることはできなかった。今後、さらに刺激を行う場所、および、刺激のパラメータを変えて確認することが必要と考えられた。
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