研究課題/領域番号 |
25560261
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤野 英己 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (20278998)
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研究分担者 |
石原 昭彦 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (90184548)
近藤 浩代 名古屋女子大学, 家政学部, 准教授 (50333183)
村上 慎一郎 姫路獨協大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30454763)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カヘキシー / 電気刺激 / 筋萎縮 |
研究実績の概要 |
本研究はカヘキシーに伴う骨格筋の萎縮とその原因となるメディエータ発現の抑制を物理療法治療の一つである電気刺激療法が可能かについて検証している.カヘキシーによる筋萎縮を惹起するメディエータとして炎症性サイトカインが知られている.一方,筋収縮はマイオカインを発現させ,筋機能の改善を促すと共に筋タンパク質の異化作用を促進する因子の発現を抑制すると考えられる. 平成26年度はリポ多糖誘導カヘキシーによるマウス骨格筋の萎縮モデルによる低周波電気刺激の萎縮予防効果と炎症性サイトカイン・筋タンパク質の異化作用を促進する因子の抑制効果について検証した.その結果,低周波電気刺激はカヘキシー誘導筋萎縮に対して筋線維横断面積の減少を予防した.電気刺激により血中の炎症性サイトカインの増加は抑制できなかったが,筋タンパク質の異化作用を促進するユビキチン,筋特異的ユビキチンリガーゼの発現やFoxOのリン酸化を抑制した.また,筋タンパク質の同化に関与するAkt-1のリン酸化も促すことが確認できた.また,カヘキシーによる筋萎縮では筋代謝障害が生じた.低周波電気刺激は筋代謝活性(クエン酸合成酵素,コハク酸脱水素酵素)の低下を減衰させることが確認された.低周波電気刺激は筋代謝に関与するPGC-1アルファ発現の低下を抑制することやp38リン酸化の増加を減衰させることが確認できた.これらの結果からカヘキシー誘導筋萎縮に対して低周波電気刺激は筋萎縮を惹起するメディエータである炎症性サイトカインを減少させることは困難であるが,筋萎縮や筋代謝障害を予防する効果があると結論づけられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はカヘキシーに伴う骨格筋の萎縮とその原因となるメディエータ発現の抑制を物理療法治療の一つである電気刺激療法が可能かについて検証した.さらに筋タンパク質の異化作用や代謝障害を促進する因子の発現を抑制できるかについても検証した.その結果,骨格筋の萎縮と代謝障害の予防効果や作用機序の一部を確認できた.平成27年度は,さらに採用機序について検討を重ねる計画である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はカヘキシーに伴う骨格筋の萎縮や代謝障害に対する低周波電気刺激の予防効果について検証し,作用機序やマイオカインの関与について検討する計画である.カヘキシーでは筋タンパク質の異化作用を促進すると共に筋代謝障害も惹起する.カヘキシー状態の骨格筋では筋特異的ユビキチンリガーゼの発現やFoxOのリン酸化がみられ,さらにPGC-1アルファ発現の低下やp38リン酸化の増加が観察された.一方,電気刺激による治療を行うことで筋萎縮や代謝障害で発現する因子や発現が低下する因子の改善がみられたが,血中の炎症性サイトカイン量は電気刺激により変化を示さなかった.骨格筋では筋萎縮や代謝障害の改善が観察されたことから,骨格筋内での炎症性サイトカインやマイオカイン,細胞内のシグナル伝達経路を検討し,電気刺激の効果について作用機序等を検討する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用したが,最終調整を実施しなかったために少額の残金が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品購入に使用する予定である.
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