研究課題/領域番号 |
25560268
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
別府 英博 (別府 秀彦) 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 准教授 (30142582)
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研究分担者 |
新里 昌功 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (80148288)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脊髄小脳変性症 / 疾患モデルマウス / リハ訓練 / 脳栄養成分 |
研究概要 |
当該研究は、環境エンリッチメント(Enriched Environment;EE)の概念を、小脳変性マウスに応用する。脊髄小脳変性症(SCD)患者の発症初期から現れる運動失調や将来の寝たきり生活を軽減させるリハ訓練の効果の検証に用いQOL向上プログラムを構築することにある。研究は、単一な強制運動でなくEE概念である多彩な行動環境の中で模擬リハ訓練をさせながら育養させる。その過程において、歩行失調、振戦、小脳プルキンエ細胞の変性脱落の軽減などを観察する。そのような計画に従い、平成25年度は、大型飼育ケージ・エコンアーク(40x40x19cm)に木製およびプラスチックの巣箱、回転円盤、円柱・四角形木製ブロック、1x1x15cmの木製棒、ステンレス餌箱、給水ビンを配置した(EE群)。その後5-7匹の雌雄を別々に入れた。一方対照は同飼育ケージに餌箱と給水ビンを配置した(Non-EE群)。なお床敷には木材チップを用いた。3か月間飼育を行い、1か月に1から2回、自発運動量および平衡感覚、協調運動を測定するためにローターロッド(Rrod)試験を行った。その結果、自発運動においては、EE群2836.5±899(n=7)に対しNEE群1668.1±112(n=5)で、有意(p<0.05)にEE群に自発的活動量の向上が見られた。またRrod試験は、6rpmでEE群が105±25秒、NEE群が32±12秒で有意(p<0.05)差が認められた。この結果は小脳失調マウスをEE飼養箱内の嗜好性玩具と共に生活させることで、強制歩行運動介入と同様、自発的な運動活動を促す効果が示された。これはEEでの育養は運動量減少による筋力低下(廃用)程度を少なくし、運動失調の進行を遅らせる可能性が考えられる。今後、未だ治療薬のないSCD患者の代替として当該マウスに脳の栄養成分や薬物投与試験を並行して行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究は、単一な強制運動でなくEE概念である多彩な行動環境の中で模擬リハ訓練をさせながら育養させることにある。その過程において、歩行失調、振戦、小脳プルキンエ細胞の変性脱落の軽減などを観察する。そのような計画に従い、妊娠中B6-wob/tマウス(小脳変性モデルマウス)の供給を受け①妊娠・授乳期、②離乳直後,③生後4週後,⑤生後3か月までのEE介入試験が行われたが、交配後の妊娠効率や出生後の生育が困難であったことから成獣や老齢群まで広げることができず、その50%のみに留まった。さらに小脳失調の評価や運動評価はA.フットプリントテスト B.正向反射テスト C.ウォーキングテスト(ビーム、パラレル、回転式パラレル) D.懸垂棒テスト E.垂直棒テスト F.Rota-rod テスト G.骨盤規程歩行解析テスト H. 重心動揺解析テスト I.オープンフィルド テストで運動障害の程度を評価する計画を立てたが、研究者の戦力が不足し30%程度にとどまった。以上の理由から、当初の達成度の1/3程度である。初年度で得られた繁殖技術と運動評価のノウハウの成果が大きかったので、残り2年間で完成したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後、未だ治療薬のないSCD患者の代替として当該マウスに脳の栄養成分や薬物投与試験を並行して行いたい。第1段階で層別した週齢層別で、最も運動失調が激しい週齢と運動量の少ない週齢を栄養成分介入実験対象群とし、その週齢の3ヶ月前から栄養療法とEEの介入試験を行う。強化(複合)アミノ酸、遊離脂肪酸(長鎖多価不飽和脂肪酸)、GABA ドーパーBDNF、抗酸化成分(シアニン系色素NK-4、テアニン、トコトリエノール)、ヒルトニン、セレジスト、クロナゼパムなど複合あるいは単品の介入試験の計画を進める。これらは予備実験で混餌投与あるいは強制経口投与を行い、体重変化を指標に副作用の強い成分を除外して候補を絞り込む。投与開始から2週間毎に行動・運動改善の測定およびEE群と投与群の行動の関連を解析する。介入期間は6か月とし、いずれかの群が対照群に対し、運動失調評価が有意に改善した時に、試験を終了とする。したがって26年度は、小脳変性マウスB6-wob/tおよび対照のB6に対しリハ運動負荷に対し EE試験および脳栄養成分投与が、既存病態にどんな影響を与えるかを時間をかけて観察する。その後SCD患者へのEEリハ訓練用の設備・用具・訓練技術に応用して、運動機能回復向上や小脳萎縮の抑制を図り生活の質を向上させるプログラムを構築したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当方の研究所はH25年度末をもって閉鎖し、H26年4月1日より新研究所に移転することになった。新施設には、新たに購入するSPFのみが疾患モデル実験室および飼育室に導入できる規則である。そのため、維持していた当該研究マウスであるB6-wob/tを全頭安楽死させた。H26年度からは、新たに購入したマウスを使って研究を始めなければならないので、マウスの購入に充てる。 次年度使用額372,205円のうち40,937円をティッシュブロック整理器の支払い、残りの331,268円は15-20匹の当マウスの購入に充てる。
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