研究課題/領域番号 |
25560273
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
永崎 孝之 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 准教授 (00435158)
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研究分担者 |
和田 親宗 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (50281837)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 松葉杖 / 松葉杖の位置 / 脇あての安定性 / 脇あて脱落防止 / 転倒予防 |
研究概要 |
本研究の目的は、松葉杖歩行中の脇あてが脇から外れやすい原因を運動学的、運動力学的側面から解明し、松葉杖による転倒リスクの軽減に寄与することである。そのために身体的機能の解析および松葉杖変位の解析を行う。そのうち今年度は計測用松葉杖の製作および松葉杖解析システムの開発を行い、プレデータを収集・解析することであった。 まず運動学的解析として、松葉杖歩行中の松葉杖の水平面における運動学的変位について先行して実施した19名の被験者のデータ解析を行った。その結果、松葉杖床接地から床離地にかけて松葉杖は水平面では外旋方向に変位することが分かった。これは従来経験則でしかなかったものを科学的に明らかにするものであり大きな成果であった。現在この成果について理学療法学の専門誌(英文)へ投稿中である。 また運動力学的解析として脇あてにかかる圧について、先行して実施した脇あて両側にかかる圧について詳しい解析を行った。結果、圧は胸壁側よりも腕側に多く加わっていることが分かった。これは松葉杖立脚期中の松葉杖には杖先を支点として胸壁から離れる力が生じていることを示唆しており、この力は脇当てが脇から外側(前額)方向に外れる力に相当している。この力のコントロールが脇あての脱落防止には重要な要素であると推察される。この結果については国際学会(6月:台湾)および国内学会(8月:広島)で発表予定である(採択済)。しかし、被験者が9名と少ないため更なるデータ収集を行い検討が必要である。 次に松葉杖変位のための計測用松葉杖の製作および解析システムの開発については、製作およびシステム構築には至ったが計測に問題が生じ、計測用松葉杖の再製作を含め計測システムの再検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
松葉杖歩行時の松葉杖変位の解析のうち、水平面上での変位については十分な結果が得られ成果を得ているが、ひずみゲージを用いた更なる解析が行えていない。原因は明確で、計測に有線のひずみゲージ(しかも15mの長さ)を12チャンネル用いてるからである。単に長いだけでなく、12チャンネルと数も多いため松葉杖歩行に多大な支障を来している。さらにひずみゲージは繊細であり、すぐに断線してしまうため十分な計測データの収集が出来ない。無線でのシステム構築は予算的にも困難であり、有線での計測にはなるが別の手段による計測を再検討中である。 また、松葉杖歩行時の身体機能の解析については上記のシステムが構築後に合わせて計測する予定であるが、EMGが4チャンネルのため計測条件が限定される可能性も否定できない。まずは松葉杖歩行時の松葉杖変位の解析が第一位の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度なる今年度は、ひずみゲージを用いた松葉杖歩行時の松葉杖変位の解析に係る課題について、松葉杖の再製作および計測システムの再構築を行いデータ収集・解析を行うことを計画している。具体的には、すでに一部明らかになった脇あてにかかる圧についてより詳細に解析することで脇あてが外れやすい原因を解明していく。松葉杖の変位、特に前額面方向の変位を明確にするために圧センサを脇あての側面(研究計画では脇あてへの荷重量を計測するため垂直方向の圧の計測のため圧センサを利用していた)に配置し、脇あての内側(胸壁側)、外側(腕側)の圧を計測する。そのために計測用松葉杖を再製作し、計測システムも圧センサ用に改良する。圧センサも有線で行うため、昨年度同様計測の困難さが生じる可能性も否定できないが、計測のためのチャンネル数がひずみゲージの場合とは異なり少なくなるため困難さは軽減される。またひずみゲージに比べて断線のリスクも低い。それでも有線のためノイズや取扱いによるシステムへのストレスなどを考えれば被験者は当初予定の50名は困難な状況であるが、可能な限り対象者数を増やす努力を行う予定である。脇あての側面の圧の解析により、間接的ではあるが身体機能の運動力学的な解析(特に総和としての肩関節の内転筋力)にもつながる。
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次年度の研究費の使用計画 |
4チャンネルEMGシステムの購入額が当初予算計画より高性能のシステムが200,000円近く安価に購入できたこと。さらに旅費についても本学(大学)予算である教育研究費より支出したことが次年度使用額が生じた主な理由である。 当該年度に予定していた実験の一部についての計測が計測機器の不十分さにより計測できなかったことを受け、次年度に新たに計測機器(データロガー)、データ保存用ハードディスクの物品購入と実験用松葉杖の再製作を行う予定である。さらに事前計画している国際学会の旅費の支出および英語論文雑誌への投稿料については計測通りに支出予定である。
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